布衣知県梵如花

全24集/2003年

 張国立が主演と監督を兼ねた、汚職役人どもをやっつけるコメディ仕立ての風刺劇。今度は知県(県令)という一番下っ端の官僚が主人公だ。
 ドラマの中でも語られているように、県令は官としては一番下っ端で、税、訴訟などなど、直接民に対する。民のためを思えば上司が喜ばず、上司の顔色を伺えば民のためにならず、真面目にやろうと思うと一番苦しい立場なのだ。
 物語は大きく三つの部分に分かれる。一、金陽県に赴任した梵如花が、民を苦しめる郷紳を退治する。二、万寿亭をめぐる汚職と、それに絡んだ打倒・梵如花の陰謀に対する戦い。三、今度こそ梵如花を片付けようと、千秋鼎をネタに、黒幕の三覚羅がいよいよ本気で攻撃に出る。
 皇帝に信頼されてはいるものの、悪を正そうとすればするほど、梵如花は上司や皇族を敵に回して孤立無援の苦しい戦いを強いられる。それでもあくまで己を曲げず、愚直に悪に立ち向かう姿はすがすがしく、演じる張国立がいつになくかっこよく見える。
 現在、中国各地にはびこる役人の汚職問題を意識したドラマなのは明らか。「なぜ貪官酷吏がいなくならないのか」という疑問に対し、梵如花は「法律だけではなく、人情が必要だ」と語る。「人治でなく法治を」という一般の認識と正反対のようで、その実「公正・公平」の大切さを訴えている点、傾聴に値する意見ではないだろうか。
 ところで、舞台である金陽県や当途府がどこだか分からないのだが、架空の地名だろうか。ロケ地は福建で、当地の自然や建物を生かした撮影は、ドラマのさわやかな雰囲気に一役買っていると思う。(2006年5月)

あらすじ
 金陽県では百万両もの赤字に加えて、県令が次々に悲惨な末路を迎え、ついに県令のなり手がいなくなった。康煕帝は梵如花を見込んで、金陽県に赴任させる。金陽県では万金剛という郷紳が皇族の三覚羅らと結んでやりたい放題、人々を苦しめていた。梵如花は苦労して、ついに万金剛を退治するとともに民の絶大な信頼を得る。すっかり改善した金陽県の様子を見ようと康熙帝は御幸を考え、そのために万寿亭を建立することにする。三覚羅と北京の高官たちは工事を利用して私腹を肥やし、ついでに梵如花を陥れようと画策。工事を請け負った呂大龍は三覚羅に恨みがあり、康煕帝の前で三覚羅を陥れようとするが。……

登場人物&キャスト

梵如花:張国立
 二度県令を罷免された経験があり、隠居生活を送っていた。金陽県の県令となるよう康煕帝に命じられ、断わろうとするも、ついに説得されて赴任する。万金剛を退治して民に慕われるが、上司の当途知府や黒幕の三覚羅を敵に回す。奔放不羈で皇帝すら恐れないが、借金をしている簸籮と、義理の妹の玲瓏にだけは頭が上がらない。

三覚羅:張鉄林
 金陽に住む皇族で、金陽のすべての悪事の黒幕。「免死金牌」を持っているため、皇帝でさえ殺せない。諸葛孔明マニアで、常に羽扇を揺らして孔明きどり。書斎にも「出師の表」を掲げている。大の芝居好きで、よく聴くのはやはり三国志もの。孔明役には演技指導してしまうほどだ。

玲 瓏:劉 孜
 梵如花の死んだ妻の妹。姉の死後も梵如花の元にとどまり、世話を焼いている。気が強くて、誰も彼女にはかなわないが、いざという時にはなかなか頼りになる存在。梵如花に思いを寄せ、あの手この手で思いを伝えようとするがなかなかうまくいかない。

簸 籮:趙 亮
 銭荘で働いていたが、梵如花の多額の借金を回収できず店に戻れなくなり、取り立てのため梵如花につきまとう。金陽にも表向きは執事としてついてくる。足を引っ張る言動も多いが、土壇場では梵如花の味方。玲瓏に求愛しているが、鼻もひっかけてもらえない。

呂大龍:鄧 婕
 今風に言えば建築会社の社長。父を陥れ流刑にした三覚羅を恨み、万金剛を退治した梵如花の手腕に期待して、事件を再調査して三覚羅を処罰するよう依頼する。やがて、梵如花と憎からず思い合う間柄に。康熙帝の御幸のために建てられる万寿亭の工事を請負い、これを利用して三覚羅を逆に陥れようとするが。

康 煕:王絵春
 言わずとしれた名君。問題続きの金陽県に頭を痛め、梵如花を見込んで県令に任命する。いやがっていた梵如花を動かしたのは、なんと面と向かって己の過ちを認めたこと! 面子を命の次くらいに重んじる中国人にとってこれは異常だ。面子よりも大事なものをきちんと尊重する態度。人の上に立つ者はかくあるべし。

二姑奶奶:潘暁莉
 三覚羅の妹。いい年なのに嫁にも行かず、酒と芝居に憂さを晴らす日々。三覚羅と仲がいいのか悪いのか、なぞの兄妹関係。兄に背いて梵如花を助けようとするが、真意はやはり不明。

斉秉章:劉乃藝
 金陽県の県令の師爺。前任の県令・劉昌続を殺したと濡れ衣を着せられるが、梵如花に助けられる。以後は梵如花の片腕として一心に働く。この俳優さんは、「神鵰侠侶」の趙志敬を演じた人らしい。判ってもうれしくないが。

万金剛:栾祖遜
 金陽県の民を苦しめる悪人。三覚羅や当途知府ほか高官に賄賂を贈るなどして取り入っているため、県令ごときは眼中にない。こいつを始末するには大勢の上司に楯突くことになるため、梵如花も手を焼く。

鮑桂星:尚印泉
 当途知府。三覚羅、万金剛とつるみ、それを弾劾しようとした前の金陽県令・劉昌続を陥れる。策はもちろん、三覚羅によるもの。梵如花の直接の上司にあたるが、当然のように敵対関係になる。

銭師爺:党永徳
 斉秉章とともに金陽県の師爺だったが、三覚羅らとつながっており、斉秉章が劉昌続を殺したと偽証したり、赴任してきた梵如花に嫌がらせをしたりする。その後はずっと三覚羅の手下として動く。

秦 亨:張春元
 鮑桂星の後任の当途知府。梵如花つぶしのために投入された秘密兵器。金に興味がなく、清官の評判が欲しい変人、というよりアホ。清官として有名になった梵如花に嫉妬し、かつ北京の高官にいろいろ吹き込まれて、最初から梵如花に敵意むき出しである。

皇 后:石 琳
 玲瓏を気に入って妹扱いし、後宮への出入り自由とする。

雲太妃:厳敏求
 先帝の妃。避寿のために金陽県を訪れたところ、三覚羅と梵如花の争いに巻き込まれる。

スタッフ
出品人:黄長君、呉振綿、周莉
製作人:張国立
監 製:鄭抗美、陳敏華、柳耀輝
策 劃:銭浜、梅加加、范艶玲
編 劇:馬軍驤
撮 像:陳昆暉
美 術:魏風
作 曲:張磊
剪 輯:楊暁英
製片主任:劉志雪
製片人:王謹、張芳明
導 演:張国立

主題歌
「布衣知県梵如花」  作詞:車行/片頭演唱:田 穀/片尾演唱:戴 嬈

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