布衣天子

全30集/2003年

 またも「鉄三角」のコメディ時代劇。「鉄歯銅牙紀暁嵐」シリーズなどの乾隆が当たり役の張鉄林、「宰相劉羅鍋」の乾隆や「康煕微服私訪記」の康煕を演じる張国立、この二人の皇帝役者が片や乾隆、片やニセ乾隆を演じ、さらに王剛がいつものように和珅を演じるという、実にあざとい企画。そしてやっぱり面白い。(左の画像はタイトルバック。あざとさ全開だ。)
 三人の芸は相変わらず冴えていて、無条件に楽しめる。しかし今回は、何と言っても張国立が一番だと思う。張鉄林と王剛は「いつもと同じ」せいで割りを食ったかもしれないが、張国立演じるキャラの面白さは群を抜いている。張国立と鄧婕の夫婦漫才も楽しい。
 ニセ乾隆こと「洪立」と乾隆の名の「弘暦」は、中国語で同音である。かつて中国では目上の人の名を直接口にしたり書いたりするのは無礼とされていた。皇帝の名はもうタブーである。しかし乾隆の前で、大声で洪立の名が呼ばれたりするものだから、もうそれだけで可笑しい。劉羅鍋や紀暁嵐の名が出てくるなど、ほとんど内輪ギャグもあり。
 官僚や役人どもの醜い言動もいつものように多々描かれるが、全体ではむしろ人情話がメインだ。そして隠れテーマは、皇帝の人知れぬ苦労。乾隆は気心の知れた洪立夫婦にだけは、誰にも言えない愚痴をもらす。「皇帝って贅沢しているだけじゃなかったんだ。大変な苦労をしているんだなあ」と二人は本気で同情し、だからこそ乾隆に協力する気にもなる。深読みすれば、現在の為政者にも同じように真面目に仕事してほしいということなのだろうか。(2006年7月)
 ※VCD、DVDタイトルは「双龍会」。

あらすじ
第1話(第1集~第11集の途中)
 刺客・楚天鷹に襲われた乾隆は、偶然居合わせた洪立が身替りになったおかげで難を逃れる。洪立はその後も影武者をするハメになり、皇帝の南巡の身替りも勤める。揚州には一足先にお忍びで出発した乾隆、あきらめずに乾隆を狙う楚天鷹のほか、天鷹に「揚州に行けば生い立ちが分かる」と言われた和珅の娘・蜻蜓もやって来る。天鷹は乾隆を母の仇だと言うが、乾隆は身に覚えがない。

第2話(第11集の途中~第17集の途中)
 「皇帝十大罪」というビラが北京の街に張り出される。和珅は、自分を弾劾しようとした揚州の孫家淦をビラの作者だとして逮捕させる。乾隆は調査のため和珅を揚州へ派遣、洪立夫婦も同行させる。しかも洪立の妻・大梅に皇帝の妹としての身分を与えた。孫家淦の娘・春児は父を救出しようとしていたが、お忍びでやって来た乾隆と出会う。春児は乾隆を信頼し、乾隆は洪立に指示を出して事実を探ろうとする。

第3話(第17集の途中~第23集)
 乾隆は揚州でのお忍びの途中に倒れ、扇子屋の娘・葉憐花に治療してもらう。そこで目にした一本の扇子に、その持ち主の太医が、ある事件にからんで逃走したことを思い出す。乾隆は和珅に調査を命令し、洪立にも探りを入れさせる。憐花は驚異的な医術の知識を持ちながらそれを隠していた。洪立は憐花をかばって乾隆に真実を告げず、ともに水害地域の病人の治療にあたるなどしてますます親しくなるが……。

第4話(第24集~第30集)
 乾隆は「明史」の草稿を見て、袁崇煥を称える文章に激怒。袁崇煥の名誉回復を望む子孫・袁忠正から賄賂を受けていた和珅は、文章を書いた編集員・章井発を口封じに消してしまう。しかし不審に思った乾隆はひそかに調査に乗り出す。袁忠正も和珅の屋敷から行方不明になり、娘の袁明英が捜し始めるが、やがて大梅を乾隆の愛人だと誤解して家に入り込む。

登場人物&キャスト

乾 隆:張鉄林
 いつも通りの乾隆です。やっぱり自分を名君だと信じている。今回、傍らには劉羅鍋や紀暁嵐のような清官はいない。和珅だけ。しかし洪立をうまく利用して、お忍びを楽しみつつ問題を解決していく。

洪 立:張国立
 揚州出身の医者。揚州に母と妻を残したまま、長いこと各地を渡り歩いていたらしい。医術の腕は確かのようだ。乾隆が刺客に襲われた時にたまたま居合わせて身替りに。その功績で太医院に配属される。影武者を勤める以外にも何かと乾隆に使われている。小心者のくせにお調子者。妻の大梅に弱いが、実はとってもラブラブ。

和 珅:王 剛
 いつも通りの和珅です。今回は娘が登場したのが新機軸か……。皇帝への忠義の念と悪だくみの場面がそれぞれ今までより前面に出ていたような。ここまで何度も悪事が乾隆にバレてピンチになるのも初めてか。

大 梅:鄧 婕
 洪立の妻。揚州で姑と暮らし、劇団の雑用をしていたが、夫とともに北京で暮らすようになる。気が強くて単純でお人よしだが、意外に頭もよい。ヤキモチ焼きで夫を尻に敷いている。乾隆ともウマが合い、かえって洪立が時々気をもむはめに。

小 黒:趙 亮(左)/小 白:陳小藝(右)
 乾隆のお忍びによく従う宦官。洪立夫婦ともすっかりおなじみ。

劉 全:張春年
 和府の管家(執事のような立場)。和珅の秘書兼パシリのような、要するに何でも屋。「鉄歯銅牙紀暁嵐」からの続投である。「紀暁嵐」で、いつも和珅の後ろで和珅と同じような表情を作っているのが可笑しかったが、このドラマではめでたく目立つキャラに出世。

太 后:厳敏求
 刺客に何度も襲われた乾隆の身を心配して南巡に反対するが、影武者の洪立が危険な目に遭うのはかまわないらしい。それでも洪立と大梅を気に入っている。その後もお忍び好きの乾隆に頭を痛める。

[第1話]

楚天鷹:劉子尉
 乾隆を母の仇と信じ、何度も暗殺を企む。蜻蜓が自分の母と瓜二つなのに驚き、出生の秘密を調べるように促す。南巡のニセ乾隆を追って揚州へやっへきて、お忍びのホンモノの乾隆と出会う。

蜻 蜓:賈静雯
 和珅の愛娘。楚天鷹に和珅が実父ではなく、母は楚夫人だと告げられ、揚州で楚夫人を知る人を探し始める。やがて和珅の悪行を知ることになり、苦悩する。洪立の目付け役のはずだったが、次第に心を許し、頼りにする。

宋文龍:何金龍
 江蘇巡撫。ニセ皇帝の洪立に必死に取り入ろうとするピエロ。

秦公公:楊洪涛
 たぶん宦官で一番えらい人。意外にいい人で洪立にも親切、何かと助けてくれる。

[第2話]

孫家淦:薄貫君
 揚州番司。和珅の貪財の証拠を調べ上げて弾劾しようとするが、かえって「皇帝十大罪」の文章の作者だとでっち上げられ、逮捕される。いつものパターンです。こういう人にはなぜか一人娘と相場が決まっているし。

春 児:蒋 靖
 孫家淦の娘。父を救うため北京へ訴え出ようとしたところ、お忍びの乾隆と出会う。見た目に似合わず武術が達者で気も強く、しまいには皇帝の妹(大梅)を誘拐して父の釈放を要求するという暴挙に出る。男装してても女の子だとバレバレなのだが、それに気づいていない。

李歩韜:繆 良
 「皇帝十大罪」の版木を彫った人物。役人に追われていたところを春児に救われ、親しくなる。

[第3話]

葉憐花:楊若兮
 かつて宮廷の太医だった父に優れた医術を伝えられたが、それを人に知られてはならないと遺言されている。お忍びの乾隆を助けてしまい、父の形見の扇子を見られたことから、平穏な生活を破られる。洪立を信頼し、父の医術を伝えようとする。

趙 嬸:李文玲
 憐花を育ててきた女性。おそらく元は使用人だったが、今では母娘と名乗っている。憐花とともに扇子屋を営んでいる。

[第4話]

袁明英:呉辰君
 父の袁忠正が「明史」が編纂されることを知り、先祖の袁崇煥の名誉回復のため動いていた。その父が行方不明になり……、というと悲劇のヒロインになれるはずなのだが、忍者スタイルで立ち回りをしまくるからか、取り違えの喜劇が展開して悲壮感が感じられないからか、そもそもやり方にあまり共感できないせいか、今ひとつすっきりしない。

老義士:韓景明
 先祖が袁崇煥の副将だったとかで、袁忠正父娘に従っている。「義士」とは気づかなかった。


スタッフ
出品人:劉継南
総監製:韓俊峰、司徒源杰
監 製:丑述成、鄒暁利、王[氵路]明、王月仁、周莉
総策劃:辺暁軍、張璋、張国立、王剛、鄭万隆、張鉄林
策 劃:肖融、徐浩、金秋俊
責任編輯:張慧玲、趙祖才、楊勝玲、屈小平
編 劇:陳文貴、龔応恬、王振潜、王琛
総導演:張国立
導 演:楊涛
執行製作:馬宝華
音 楽:陳涛、王備
製作人:張国立、張鉄林
総製片人:辺暁軍、張璋
副導演:任正斌、孫夢泉、柏煒
撮 像:陳昆暉、彭学軍
美 術:魏風

主題歌
片頭歌「我将我心当流雲」  作曲:王備/作詞:陳涛/演唱:潘匯強
片尾歌「你太累」  作曲:王備/作詞:陳涛/演唱:尹相杰

上 へ   電視劇一覧   トップページ