孝荘秘史

全38集/2002年/台湾

 ホンタイジの妃、順治帝の母、康煕帝の祖母として清朝初期の三代の皇帝を支えた孝荘太后の生涯を描く。歴史ものというよりは、孝荘こと大玉児とドルゴンの報われぬ愛がメインテーマのメロドラマ。
 ヒロイン役の寧静のためにあるドラマと言っても言いすぎではないだろう。寧静が徹頭徹尾、輝くばかりに美しい。美しいばかりでなく、理知的で智謀に長けた女性として描かれていて、そこが魅力的だ。そんな彼女のあの大きな美しい目から涙がはらはらとこぼれ落ちれば、ドルゴンでなくともイチコロだわ。
 そのドルゴン、馬景涛だというのが最初は不安だった。瓊瑶をはじめとする台湾メロドラマの王様というイメージがあったので。だいたい辮髪やヒゲが似合うのか?と私は本気で心配していた。ところがなかなかどうして、思いのほかかっこよくて見直した。
 寧静以外の女優陣も充実している。しっとりと落ち着いた大人の女性の皇后、またもヒステリックな役だがそれがやたらとうまい何賽飛演じる海蘭珠。ドルゴンの妻となる小玉児、大玉児に仕え続ける侍女・蘇茉爾。董宛如(董鄂妃)を演じるのは「天龍八部」の天山童姥役で日本にお目見えした舒暢。最初はきれいでおとなしいだけの女の子と思っていたら、順治帝との愛を深めていくのにつれて魅力的になっていくのに驚いた。さらに冒頭で死んでしまうドルゴン兄弟の母に斯琴高娃。ゲスト出演か。
 ドラマはホンタイジとドルゴン、ドルゴンと大玉児、大玉児と順治帝、順治帝とドルゴン……と幾重にも重なる葛藤が見所。敬愛していた兄に帝位を奪われ母を殺され恋人を奪われたドルゴン。にもかかわらず兄を名君と認め、帝位を手にするチャンスを幾度もあえて見逃してしまう。弟のそんな心を見透かし警戒しつつも大任を与え続け、時には排除を試みるホンタイジ。そして何度もひそかにドルゴンの危機を救う大玉児。後年には母の不幸を引き継いだかのように、息子の順治帝も恋愛結婚悲劇の主人公になり、母と子のすれちがい愛憎劇が続く……と、面白いけれどねっとりとした感触のドラマだ。
 このドラマの成功に味をしめたか、尤小剛監督、馬景涛主演で「太祖秘史」「皇太子秘史」なるドラマも作られている。でも私はこのドラマだけでお腹いっぱい。(2006年4月)

あらすじ
 ヌルハチは十四子のドルゴンを後継者にするつもりだったが、ホンタイジは父の遺志を隠蔽し自ら後継者となり、秘密を知るドルゴンの母を殺す。大玉児はドルゴンと恋人同士だったが、ドルゴンが戦死したとの誤報もあり、ホンタイジの妃となる。しかし心を開かない大玉児は次第に疎まれ、息子・福臨を生むものの冷遇される。
 ホンタイジの死後、その長子・豪格とドルゴンが帝位をめぐって対立するが、二人の争いが内乱に発展するのを防ぐため、幼い福臨(順治帝)が即位することになった。ドルゴンは摂政として権力を握るが、長じた順治帝はドルゴンへの反感をあらわにする。ドルゴンが再び帝位への野心を見せたため、ついに大玉児とドルゴンが対立する時が……。

登場人物&キャスト
大玉児(孝荘太后):寧 静
 派手な衣装もばっちり決まって美しいの一言。はっきりしたキレのいい演技で、ドラマを最初から最後まで支える。私は彼女を見るのが楽しみでこのドラマを見ていた。

多爾袞(ドルゴン):馬景涛
 帝位と大玉児と、目の前にありながら手にすることのできないものへの渇望にさいなまれ続ける。しかも大玉児は結局、ドルゴンへの愛よりも国や息子を取ってきた。何だか報われない一生。

皇太極(ホンタイジ):劉徳凱
 もうちょっと貫禄がほしい。監督も兼ねている。

哲哲(孝端太后):鄔倩倩
 ホンタイジの皇后。大玉児のおばにあたり、姪を見守り続けるとともに智謀を頼りにしている。良妻賢母の鑑のような女性で、夫を支え清朝のために心を砕く。

海蘭珠(宸妃):何賽飛
 大玉児の姉。ホンタイジの妃となり寵愛を一身に集めるが、息子を失ってから神経を病み早逝する。

大福晋:斯琴高娃
 ヌルハチの妃、ドルゴン兄弟の母。ホンタイジに自殺を装って殺害される。

努爾哈赤(ヌルハチ):許冠山
 出番はほんの少し。遼寧城での負傷が元で死亡。

多 鐸:趙鴻飛
 ドルゴンの同腹の弟。常にドルゴンの味方で、帝位を奪回するよう焚きつけ続ける。

蘇茉爾:胡 静
 大玉児に幼い頃から仕え常に傍らに控える侍女。長年にわたる大玉児とドルゴンの愛憎劇その他をすべてそばで見続けてきた。これって当人と同じくらいつらいかも。

小玉児:白慶琳
 ドルゴンの妻になるが夫に顧みられず、大玉児に嫉妬し続け性格がゆがんでしまった。しかしヒステリックに泣きわめくしか能がないので、同情する気になれない不愉快な女。

福臨(順治帝):厳 坤
 母の心、子知らず。よく言えば真っ直ぐな、悪く言えば意固地な少年。愛する董鄂妃に死なれて五台山で出家する。このシーン、五台山と北京を一晩のうちに行き来しているけど……。

董鄂妃(董宛如):舒 暢
 順治帝に愛されて最初は迷惑に感じていたが、やがて彼への愛を自覚すると「身を退け」という説得にも負けない。紆余曲折を経て妃になるが、それまでのいきさつから姑に冷たくあしらわれる。それでもめげない芯の強い女性。

スタッフ
導 演:尤小剛、劉徳凱
出品人:尤小剛、黎瑞剛
編 劇:楊海薇

主題歌
「你」  作詞:尤小剛、陳涛/作曲:張宏光/演唱:屠洪剛

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