明代監獄

場  所:山西省洪洞県古槐南路
行き方:洪洞へはバスか列車。そこからは市内バスで行けるようです。小さな町なので、人に道を聞けば分かるはずです。
     
 またの名を「蘇三監獄」。京劇「玉堂春」などで有名なヒロイン・蘇三(玉堂春)が入獄していたのがここだというのです。
 もとは県衙の一角で、明の洪武2年(1369年)に建てられました。「中国で唯一完全に保存されている明代の監獄」だそうです。文革時に破壊され、最近修復されました。そのため建物もみな新しく、「明代」といわれても正直ピンとこないのは残念でした。しかし、ドラマや映画で見る監獄は、本物よりずっとマシらしいということは分かります。

入り口。すぐ目の前は普通の道路です。

まずは蘇三の像が出迎えてくれます。後ろの建物は「蘇三蝋像館」。蝋人形で物語のいくつかの場面を再現していました。

牢獄の入り口。

牢房が並んでいます。12部屋あります。

部屋の中。けっこう狭いのですが独房ではなく、一部屋に数人詰め込まれていたそうです。

屋根と屋根の間には金網が張ってあり、囚人が逃亡するのを防ぐため、鈴が吊り下げられています。

死囚洞。牢内で死んだ囚人の遺体は、この小さな穴から外へ運び出されました。

牢役人の像。

囚人の首枷。実物かどうかは?

死刑囚を収容する牢の入り口。「虎頭牢」と呼ばれていますが、本当はトラではなく「狴犴牢」です。「狴犴(ヘイカン)」とは龍の第4子で、姿が虎に似ています。公正で訴えごとを好み威厳があるため、牢の入り口に顔が装飾されたのだそうです。ドラマなどを見ていても何故トラの顔なのだろうと思っていたのですが、謎が解けました。

狴犴牢=虎頭牢の入り口をは内側から見たところ。扉は背が低く、腰をかがめないと通ることができません。扉は二重になっていますが、それぞれつがいの場所が左右違います。逃亡しようとした囚人が戸惑うようにと設計されているのだそうです。

死刑囚牢です。向かいには役人の部屋も。

通りに面する壁。「丈八墻」といい、高さが八丈あります。壁の内部には砂が詰められており、囚人が脱獄を図って壁に穴をあけてもすぐ塞がってしまうように工夫されています。

「蘇三囚牢」。ここに蘇三がつながれていたといわれています。この女囚牢の壁は厚さが1メートル20センチとのことでした。

牢内の蘇三の像。写真では分かりませんが、牢の形も窑洞(ヤオトン)風で、さすが山西です。

黒牢。処刑の決まった囚人を入れる牢です。窓も明かりもなく真っ暗。

牢から出たところに明代の刑罰についての人形展示がありました。明代五刑とは「笞刑、杖刑、流刑、徒刑(懲役)、死刑」だそうです。写真は手前が徒刑、奥が流刑です。


おまけ

蘇三監獄からほど近い関帝廟。元代の1306年の創建です。入場料は蘇三監獄と共通。ここで蘇三が王金龍との再会を願い籤を引き願いがかなった、のだそうです。

蘇三についての展示がありました。元ネタは「警世通言」の「玉堂春落難逢夫」かと思っていましたが、元になった実話があったようです……本当かなあ?
【物語のあらすじ】
都の妓女・蘇三は南京から来た王金龍と愛し合うが、王はやがて妓楼で金を使い果たす。王を帰郷させた後、客をとるのを拒む蘇三は、山西・洪洞県の沈某に妾として売られてしまう。沈夫人は愛人と共謀して夫を毒殺、蘇三に罪をかぶせる。蘇三は死刑を宣告されるが、科挙に合格し太原に赴任した王金龍は事件を知り、蘇三を太原に呼び出し再審。無罪放免となった蘇三はめでたく王に嫁ぐ。

蘇三の裁判資料だというのですが、ホンモノでしょうか???

洪洞のもう一つのメジャー観光地・大槐樹公園の一角にある蘇三の像。「蘇三却枷処」とあります。太原へ護送される途中、ここで休んだのでしょうか? 実はちゃんとお芝居を見たことがないので分かりません……。蘇三が太原へ護送される道中は「蘇三起解」もしくは「女起解」といって有名な場面です。


 入場料は「蘇三監獄」「蘇三還願処(関帝廟)」の通し券30元。蘇三監獄のみのガイド料20元。楡次や平遥の県衙にも牢獄がありましたが、清代のものなのでこちらのほうが古いということでしょうか。
 洪洞へバスで行くなら、臨汾からのほうが便利でしょう。私は太原側から臨汾行きのバスで途中下車しましたが、降車場所は町から5キロ離れたバス停車場でした。そこからタクシーで監獄へ(20元)。
 帰りは大槐樹の近くから1路のバスに乗り、町はずれの一級路口で下車。長距離バスの通り道らしく、太原方面、臨汾方面双方のバスが停車して乗客を乗り降りさせていました。(ということは、来た時もここで降車できたのか?)バスターミナルが町のどこかにあるはずですが、太原行きのバスにはどこで乗るのかと人に尋ねると、ここを教えてくれました。(2007年8月)

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