武則天

全30集/1995年

 劉暁慶の劉暁慶による劉暁慶のためのドラマ、と言いたくなる作品。「西太后」で世界に知られ、中国映画界に君臨する(当時)大女優が、中国史上唯一の女帝を演じる。これだけでもう成功を約束されたも同然ではないか。期待に違わず、当時44歳の劉暁慶が、武則天の14歳から80歳までを見事に演じている。中でも皇后時代が、実年齢に近くてムリがないせいか輝くばかりだ。劉暁慶は美人だが欠点(具体的には書きたくない)も目立つ顔立ちだと思う。しかしこのドラマではメイク(毛戈平)の功績だろう、厚化粧も見事にきまって、いつも以上に美しく見える。
 ドラマは当然、武則天を評価する立場から描いている。最初から野心があったわけではなく、自分の身を守るために智恵の限りを尽くすうち、権謀術数を身につけていく。生き伸びるため、あるいは国のためを考えた選択がやがて自分自身を政治の表舞台に押し上げ、敵を作っていく。そうなると、地位を守るためには意にそまぬ悪事も行わなければならなくなる。地位を維持し続けるか、転落すれば死かの二者択一しかないのだから。やがて政治家として自信を深めていくにつれ、女であるというだけで自分より明らかに出来の悪い夫や息子たちの下に立たなければならない現実に突き当たる。これに異議をとなえ、ついに実行に移してしまったのだった。
 理解者はなく、頼れるのは己のみ。権力か死かの綱渡りの日々。肉親を殺しまくったのも、好き好んでのことではない、みんな相手の裏切りのせいなのだ。ああ孤独で悲劇的な生涯。……アンチ武則天の人が見ると噴飯ものかもしれないが、劉暁慶を鑑賞するためのドラマだと思って鷹揚に構えてほしい。ヒロインに感情移入できるか否かが評価の分かれ目だろう。私は好きです。
 シナリオに原百代の「武則天」の影響があるようだが気のせいだろうか。中国の書店で翻訳が売られているのを見たことがあるので、脚本家が参考にした可能性はあるかもしれない。
 その他の出演者では、鮑国安が晩年の太宗を演じて、さすがの貫禄。名優の揃い踏みでドラマに厚みが増している。と言いたいところだが、出番の少ない脇役になると安っぽい俳優がけっこう目につく。韋后などただのおばさんで、武則天より老けてみえる。美少年のはずの張兄弟は、見るに耐えなかった。
 屋内での場面が多く、見た目のスケールという点では物足りないかもしれない。音楽がやや弱い気がしたのも惜しい。残酷シーンはあっさり寸止めで、画面には登場しないのでご安心を。
 あれから12年、劉暁慶は再び「日月凌空」なるドラマで武則天を演じる。写真を見ると、老けていない。すごい。(2007年1月)

キャスト
武 媚:劉暁慶/李 治:陳宝国/李世民:鮑国安/徐 恵:李建群/高陽公主:馬 麗/王福来:武力平/長孫無忌:劉毓浜/房玄齢:王 培/褚遂良:張光正/徐世勣:呂 斉/小順子:肖暁華/王皇后:鄭 爽/蕭淑妃:于 慧/韓国夫人:穆 寧/楊 氏:金淑媛/許敬宗:李如平/賀蘭氏:苗乙乙/太平公主:梁 麗/上官婉児:茹 萍 ほか

スタッフ
総製片人:劉大印
編 劇:張天民、冉平(執筆)、柯章和
撮 像:杜信、董印徳
美術設計:路奇、易振洲、張鳴
服装設計:李建群
造型設計:楊樹雲
音楽・作曲:陳受謙
執行導演:陳衛国
歴史顧問:李斌成
監 製:黄振棟、張伸群、蒋徒基、邱作
製片主任:倪克、尚治文
総顧問:×鋼、鄭金剛
総監製:王建明、董良翬
執行監製:彭民雄
監 製:黄振炎、劉涓迅、蒋純基、邱作才、張沢株、張仲群、顧浩興、黄立華
導 演:陳家林

主題歌
片頭歌:「人之初」  演唱:毛阿敏
片尾歌:「永恒的誘惑」  演唱:楊鈺瑩/「不愛胭脂愛乾坤」  演唱:李娜

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