食糧問題をテーマにした、重厚で骨太な文芸大作。
飢えた被災民に配る粥が水同然であるのに激怒した劉統勲は、責任者はじめ21人の下っ端役人をその場で処刑する。その後、食糧倉庫が空っぽであるのを知り、愕然としてつぶやく。「殺したのは間違いだったのか?」。……殺す前に確認しろ。人の話をきかず、いきなり力に訴えるのは、武侠ものだけの特権ではなかった! この暴力の主は欽差大臣、つまり政治権力そのものだから、余計始末が悪い。
と、のっけから少々ひっかかる場面はあったが、誤解なきよう、これは(正義の)主人公が、被災地への米が横流しされていることに気づくという大事な場面。この事件を発端に、大旱魃に見舞われた乾隆初年、被災各地で私腹を肥やす役人や北京の腐敗官僚たちと、不正を暴こうとする正義派官僚の戦いが繰り広げられる。しかし、不正の告発も政敵の死も、苦い悔恨を伴うこととなった……。
主人公といえるのは劉統勲(王慶祥)と米河(王亜楠)だが、出番は必ずしも多くなく、群像劇といったほうがいいかもしれない。この二人のほか、米汝成(杜雨露)と盧焯(杜志国)が、役柄と老練な演技が相まって強い印象を残す。乾隆帝の聶遠は、何しろベテラン演技派に囲まれているので、演技という点で見劣りするのは否めないが、頑張ってはいる。米河は、世間知らずのお坊ちゃんかと思いきや、瞬く間に有能ぶりを見せつけ、さらに三人の美女に思われるというおいしい役。その三人のヒロインでは、喜怒哀楽を全く面に出さない柳含月(王海燕)、小悪魔チックな小梳子(李倩)が特に印象的だ。
監督は「第五世代」の呉子牛。私はこの人の映画は好きではなかったのだが、このドラマは正攻法で真っ向勝負だ。アップを多用した様式化されたような演技は、最初は鼻についたが、慣れると同録だと思われる迫真の台詞まわしと相まって、力強く見る者に迫ってくる。派手なスターはいなくても、演技派が揃って見応えたっぷりだ。そして、映画のような大規模なカメラワーク。ドラマにしておくのがもったいないスケールの大きな画面が多く、中でも群集シーンはあまりの迫力に圧倒される。
趙季平が手がけた重厚な音楽も、ドラマとマッチして素晴らしい。
(2006年9月)
あらすじ
乾隆元年の早春、早くも旱魃が予想される。その頃、刑部侍郎・劉統勲と倉場侍郎・米汝成は官倉の穀物をめぐる不正に気づき、調査を始める。浙江巡撫の盧焯も時を同じくして現地での不正を暴く。米汝成の息子の米河は家を飛び出し、やがて盧焯や劉統勲に才覚を認められて六品の官に就き、干害が広がる中、東西に奔走する。
登場人物&キャスト
劉統勲:王慶祥 | |
米 河:王亜楠 | |
米汝成:杜雨露 | |
盧 焯:杜志国 | |
乾隆帝:聶 遠 | |
柳含月:王海燕 | |
小梳子:李 倩 | |
盧蝉児:尹春徳 | |
田文鏡:田成仁 | |
明灯法師:胡慶士 |