隋唐英雄伝

全40集/2003年

 「隋唐演義」「説唐全伝」あたりを下敷きに、オリジナル設定も加えた、明るく楽しい、英雄好漢たちの大活躍。隋による天下統一から始まり、やがて煬帝によって世が乱れると、江湖の好漢、緑林の豪傑たちが集まって世直しのために立ち上がる。彼らは後に唐の李世民に帰順して、天下統一のための戦いで戦功を立てる。そして玄武門の変を経て李世民が即位し、再び泰平の世が訪れるまで。
 主人公は一応、秦叔宝。幼くして父を失った秦叔宝が成長し、江湖で名を知られるようになり、やがてさまざまな事件や縁がつながって、「水滸伝」のように英雄好漢たちが出会う。義兄弟となった彼らは隋王朝への反乱の口火をきって、瓦崗寨を根拠地に新しい国づくりを目指し始める。このあたりまでの展開は、勢いがあって本当に面白い。登場人物が増えると秦叔宝の影も薄くなるものの、天下統一の戦いにおける悲劇によって物語に登場した秦叔宝が、やがて次なる天下統一のために重要な役割を演じる、これが物語の大枠になって、ドラマがきれいにまとまったような気がする。
 とにかく、もともと面白い物語をうまくアレンジしていると思う。大勢の登場人物もそれぞれキャラ立ちしていていい。秦叔宝(黄海冰)は優等生タイプだが、江湖の好漢の見本のような単雄信(任山)、カッコつけて登場した割には後半なんだかなーな王伯当(卓凡)、お坊ちゃまな羅成(聶遠)、一見根暗そうで実は意外に熱い智謀の士・徐茂公(譚建昌)、単細胞タイプだが気持ちのよい程咬金(林子聰)や尉遅恭(寇占文)、以上はたぶん中国人にはおなじみなのだろうが、こういった長い時間をかけて人々に愛されてきたキャラは、やはりそれぞれ魅力的だ。
 テンポがよく、時々ドライすぎるくらいスピーディーな展開。派手なアクションも楽しい。何よりつっこみどころ満載!なのがツボだった。ややチープ感はあるものの、気軽に楽しむ娯楽作品としては上々の出来ではないか。(2010年2月)

あらすじ
   577年、北斉の最後の砦・済州が北周の武将・楊林に攻め落とされる。守将・秦彝は楊林に殺害され、幼い息子の秦叔宝は母親とともに逃れるが、程咬金とその母にかくまわれ、ともに暮らすことになる。581年、王朝は隋に変わり、楊林は隋王朝の重鎮となった。ある日、咬金は兵士を殺してしまい、母子ともに逃亡。
 大人になった秦叔宝は、父の仇討ちを胸に秘めつつも、一捕頭として働いている。やがて煬帝が即位すると、そのデタラメぶりに、たちまち怨嗟の声が世に満ちる。ある時、秦叔宝は出張の際に行き違いから文無しになり、金を工面するために単雄信を訪ね、彼と彼を盟主とする緑林の豪傑たちと親しくなる。その帰途に役人を誤殺してしまった秦叔宝は流罪になるが、流刑先は叔母の嫁ぎ先である冀州の羅藝のもとだった。災い転じて福となり、身内であることが判明し、従兄弟の羅成とも仲良くなる。
 やがて山東に帰った秦叔宝は、父の仇である楊林に気に入られてしまい義子になる。一方、程咬金と再会し、単雄信、王伯当、徐茂公らと義兄弟に。そして楊林が都へ送る金品を強奪して処刑されそうになった程咬金を救うため、楊林と袂を分かち、仲間たちとともに反隋の旗印を掲げ、瓦崗寨を奪って根拠地とする。……

登場人物&キャスト
秦叔宝:黄海冰   渾名は小孟嘗。家伝の双鐗を武器とする。後半は影が薄くなるが、最後は美味しいところをさらって、やっぱり主人公。
羅  成:聶  遠   渾名は冷面寒槍。羅藝の息子、秦叔宝の表弟。単冰冰に惚れて、反乱の仲間入り。
程咬金:林子聰(ラム・ジーチョン)   渾名は混世魔王。秦叔宝と幼なじみ。瓦崗寨で数年間いやいや皇帝を務める。
単雄信:任  山   渾名は小関羽。二賢荘の主で、七省緑林盟主。渾名に恥じない、強くて人望もある好漢。兄を李淵に殺される。
徐茂公:譚建昌   渾名は小諸葛。道士。智謀に長け、瓦崗寨の軍師となる。
王伯当:卓  凡   渾名は白衣神箭。文武両道で、瓦崗寨の経営に尽力する。李密に忠義立てするのはいいけど……本作のガッカリ大賞。
単冰冰:菁  蔚   単雄信の妹。跳ねっ返りでわがまま。彼女にとっても李淵は兄の仇のはずなんだけど、見事にスルー。
李蓉蓉:童  蕾   隋の成公・李渾の娘。秦叔宝の恋人。おとなしいヒロインかと思いきや、アジ演説して男たちに反乱を決意させたり。
尉遅恭:寇占文   渾名は黑面神。太原の鍛冶屋だったが、劉武周の配下となり唐と戦う。唐に帰順してからは程咬金と仲良しに。
楊  林:王絵春   隋の文帝の叔父。靠山王。秦叔宝の父の仇だが、隋王朝への忠義一途で、敵にするのはもったいない立派な人。
裴元慶:釈小龍   渾名は霹靂火。隋の武将・裴世基の息子。家族揃って瓦崗寨に仲間入り。でもたちまち退場……。
裴翠雲:謝晶晶   裴元慶の姉。程咬金の妻となる。ものすごいおデブちゃんだが、程咬金は美人だと断言。
秦  彝:申軍誼   秦叔宝の父。北斉の武将。済州を守っていたが、済州失陥後に楊林に殺害される。
寧夫人:路  捷   秦叔宝の母。立派な方です。叔宝もとっても親孝行。
程  母:方青卓   程咬金の母。善良できっぷがよく、この母子漫才はなごむ。
隋文帝:陳継銘   楊林に絶大な信頼を寄せる。
楊  広:謝君豪   隋の煬帝。父の文帝を殺害して即位。暴君というより、無軌道でだらしない遊び好きな皇帝。
宇文化及:楊樹林   煬帝が皇子時代から側近として仕え、即位後は宰相に。わかりやすい悪役。
宇文智及:張東昇   宇文化及の弟。同じく煬帝の側近だが、兄より小者。
宇文成都:張政勇   宇文化及の次男。隋の第一勇士のはずが、もっと強い人が次々と出てきて、あまり強く見えなくなった。
李  淵:杜志国   隋の唐国公。一家ともども楊広に殺害されるところを秦叔宝に救われ、以来恩人と崇める。後に唐を建国。
李世民:鄭乙霖   李淵の次男。後の唐の太宗。きれいな顔して立派な人だけど、薄すぎないか。
李元覇:馬  佳   李淵の四男。刺客に襲われた時のケガが元で知恵遅れに、そして何故か異常な怪力に変身。命の恩人の秦叔宝を尊敬する。
李建成:張衛星   李淵の長男。後に皇太子になる。世民に皇太子の座を奪われると心配。元吉と仲が良い。
李元吉:鐘  亮   李淵の三男。二人ともわかりやすい悪役なのはいいとして、もうちょっとレベルが高いほうが……。
羅  藝:高  雄(エディ・コー)   羅成の父。妻は秦彝の妹。秦彝の仇討ちのはずが楊林に取り込まれ、隋の靖辺侯となる。
秦夫人:趙  娜   羅藝の妻、羅成の母、秦彝の妹、秦叔宝の叔母。
李  密:馮進高   初めは隋の高官。蕭妃に手を出したため逮捕されるが、護送中に程咬金に助けられ、瓦崗寨の皇帝の座を譲られる。
王世充:崔景富   洛陽を擁し、唐と天下を争う。単雄信を婿にし、ほかの瓦崗寨の仲間を部下にしようとするが。
王小二:徐錦江(ツィ・ガムコン)   潞州で宿を営む。妻が李渾夫人と親戚だった縁で李蓉蓉を預かるが、彼女がお尋ね者になったため、扱いもぞんざいに。秦叔宝がここに宿をとって物語が大きく動き出す。

スタッフ
出品人:李泗磷、劉剣、宋楽群
製片人:李泗磷
執行製片人:王冰河
策  劃:魏展才、王群力、周戦偉
監  製:殷春樹、周標賢、曽蕊
編  劇:蘇小魚
美術指導:松邦、李涛
導  演:古偉業
武術指導:阿成
撮  影:殷小林、陳雨洲、徐公啓、孫永慶

主題歌
片頭歌「真英雄」  作詞:李泗磷/作曲:蕭白/演唱:韓磊
片尾歌「情与涙」  作詞:李泗磷/作曲:蕭白/演唱:王菲(フェイ・ウォン)

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