神探狄仁傑

全30集/2004年

 これまた狄仁傑を主人公にした謎解きもの。「神探」とは名探偵の意。シリーズ第四作まで製作されているヒット作だ。
 突厥からの和平の使節団を迎え、宮中で華やかな宴が催される。ところが、突厥の可汗に嫁ぐはずの郡主の一行が襲われ、使節団も洛陽を出たとたんにぱったりと消息を断つ。まもなく、使節団は実は洛陽への途上に全員殺害されていたことが判明。武則天が謁見した使節団はなんとニセモノだったのだ! 使節団も護衛兵もそれぞれ100人以上いたというのに……。この冒頭のエピソードに象徴されるように、トリックや事件の全容がいちいち派手で大仕掛け。事件を捜査し、解決するのが、ご存知、名探偵・狄仁傑。狄仁傑は、他人の及ばないすぐれた洞察力で謎を解き、事件背後に隠された反乱計画や皇帝暗殺の陰謀を暴いていく。ドラマは全3話から成るが、それぞれ繋がりがある。
 先に悪口を書くと、この狄仁傑(梁冠華)、私あんまり好きじゃないなあ。つい最近「大宋提刑官」を見てしまったせいか、証拠なしで、脅したりカマをかけたりして供述を引き出すやり方がどうにも卑怯に見える。自信たっぷりの偉そうな言動は嫌味だし、周りの人や皇帝からも凄い人だと讃えられ、否定も謙遜もしない態度も気に入らない。権力と兵力をあれだけ使い放題なら、事件を解決できて当然でしょー。そもそも、あざとい大がかりな仕掛け(例:殺人からくり屋敷)は、私の好みではない。唐の復活を望むのはよいとして、あの皇太子で本当にいいのか? 喬泰、陶甘、馬栄のひとりも出てこないのはちょっと寂しい。ついでに、画面全体が暗いため、画質のよくないDVDで見るのはちょっときつかった。
 事件の複雑な絡みをぎりぎりまで引っ張りつつ、巧みなトリックと伏線で視聴者を幻惑させ、あっと驚くどんでん返しをたたみかける語り口はうまい。特に第一話は完成度が高い。見事にひっかかった。ホラーっぽかったり、ケレン味たっぷりの演出も嫌いではない。武則天(呂中)と、狄仁傑の片腕である李元芳(張子健)はけっこう好き。パート2以降も見ようかな、と思うくらいには充分面白かった。(2010年4月)

あらすじ
[使団驚魂](全13集)
 突厥からの使者団が全員殺害され、突厥に嫁ぐ翌陽郡主も行方不明になり、使者団の護衛隊長だった李元芳が指名手配される。時を同じくして、洛陽郊外で取調べを受けていた秘密の政治犯が姿を消した。武則天は、狄仁傑に事件の捜査を委ねることにし、上京を命じる。その道中、狄仁傑を訪ねた李元芳が無実を訴える。二人は命を狙わながらも無事に洛陽に到着。事件の鍵が幽州にあると知った狄仁傑は、李元芳と、武則天に狄仁傑の護衛と協力を命じられた虎敬暉とともに、幽州を訪れる。幽州は刺史・方謙の独裁状態になっており、不穏な空気が漂っていた。

[藍衫記](全10集)
 湖州を訪れた狄仁傑と李元芳。たまたま立ち寄った劉家荘で出会った若者・劉伝林の突然の死に狄仁傑は不審を抱く。一方で、ふたつの不審な殺人事件にも遭遇、事件が都に繋がっているらしいことに気付く。狄仁傑は劉家荘に宿を取り、県令・曾泰の協力のもと、まずはひそかに劉家の調査を進める。劉伝林の父・劉査礼に嫁いできたばかりの若い夫人が、いかにもあやしげだが。

[滴血雄鷹](全7集)
 各地で謎の殺人事件が発生。被害者はみな首と左腕を斬り取られ、現場には血で鷹の絵が描かれていた。洛陽そばの永昌県でも同様の事件が起こり、狄仁傑は永昌県令となっていた曾泰に請われて、事件の調査に乗り出す。やがて今回の殺人事件と60年前のある一族皆殺し事件と関連があるらしいことが分かってくる。しかも、犯人はともに隋の宇文成都の霊だという。その頃、武則天は夜毎に悪夢にうなされ、かつて自分が殺した者たちの霊の仕業だと信じこんでいた。霊など存在しないと武則天にも断言した狄仁傑だが、なんと首なし将軍=宇文成都を目の当たりにしてしまう。(「スリーピー・ホロウ」を思い出すな~。)

登場人物&キャスト
狄仁傑:梁冠華   ドラマ冒頭は県令だったが、事件の捜査を命じられ、中央に返り咲く。名探偵として有名で、武則天の絶大の信頼を得ている。
武則天:呂  中   女帝。国号を周とする。名君だが、秘密組織を使って、自分に反対する者を消したりという暗い面も。息子である皇太子をも疑い続ける。
李元芳:張子健   第一話で狄仁傑に救われて以降、片腕となって働く。とっても強くて真面目で有能。
狄  春:趙志剛   狄仁傑の召使い。
張柬之:韓継明   武則天のあとは唐に戻そうとする勢力の親玉。狄仁傑とも親しい。
武三思:賀松寿   武則天の甥。皇太子の座を狙う。

第一話[使団驚魂]
虎敬暉:祝延平   皇帝の護衛隊長。命令によって幽州に同行し、李元芳とともに狄仁傑の片腕となる。
方  謙:厳燕生   幽州刺史。明らかに悪事を行っている。
金木蘭:彭  丹   幽州で、各地の反武則天勢力と連携し、自ら女帝たらんと企む女。
李  二:徐貝貝   幽州で逮捕されたのち脱獄し、幽州刺史に命を狙われる謎の男。

第二話[藍衫記]
曾  泰:須  乾   湖州の県令。有能ぶりを狄仁傑に買われ、狄仁傑の捜査に全面的に協力する。
劉査礼:李世龍   劉家荘の性格の悪そうな主人。屋敷には何か秘密がありそうだ。
方瑩玉:蒋  欣   劉査礼の新婚の妻。妓女だった彼女を劉が見初めて娶ったというが。
劉伝林:徐飛廉   劉査礼の息子。狄仁傑と出会った翌日に事故死し、狄仁傑は不審を抱く。
劉  大:趙軍凱   劉家荘の管家。実直そうな男。
太  子:王鑫盛   武則天の三男、李顕。皇太子派の狄仁傑にさえ惰弱と評されている。

第三話[滴血雄鷹]
太平公主:劉  爽   武則天の愛娘。男だったら皇太子になっていたと思われる。
春  香:陳  瑞   武則天の傍近く仕える若い宮女。
王知遠:閻以昌   胡散臭い道士だが「国師」。武則天のために闇の仕事を引き受ける一方で、徐霊を行う。
何  雲:夏志平   馬の専門家。殺人事件の犯人の騎乗する馬の調査のため、狄仁傑に協力。

スタッフ
総策劃:高建民
総監製:汪国輝
出品人:朱彤、龐建
総制片人:譚湘江
責任編導:杜力
責任制片:李長江
美術設計:靳喜武
撮  影:張遠
制片人:張文玲
編劇・導演:銭雁秋

主題歌
片頭歌「長歌一曲」  作曲:程大兆/作詞:高建民/演唱:騰格爾

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