神鵰侠侶

全48集(※1)/2006年

 張紀中版・金庸大作第4弾。見終わって1週間たっても、主題歌が頭の中をぐ~るぐる。はい、またもどっぷりハマりました。ただし、文句をつけたいところも山ほどある!
 楊過の子供時代のほか、あちこち削ったのは仕方ないとして、原作を知らない人が見たら話についていけないだろう。脇役、特に「射鵰英雄伝」からの続投キャラの扱いがずいぶん粗雑だ。洪七公と欧陽鋒の最後の対決のシーンは特にひどい。どの人の出番も、なんだか大急ぎな感じがぬぐえない。
 その分、楊過と小龍女のシーンはしっかり、といいたいところだが、前半、小龍女を美しく見せることにばかり意を注いで、楊過の心理描写がかなりけずられているような。知らない人が見たら楊過の言動は「?」だらけだと思う。主人公はどっちだ!?
 画面はとても美しく、特に九寨溝でロケした風景は本当に美しい。美しいが、終南山、襄陽郊外、絶情谷とどこにでも現われる九寨溝の風景に、一瞬「ここはどこ?」状態になる。あの独特の風景は見間違えようがないのだから。
 アクションがワイヤーとCGのてんこもりなのは仕方ないとして、それ以外にもあちこちでCGが目に痛い。ただし、襄陽の巨大セットを生かした戦争シーンには度肝を抜かれた。城壁の俯瞰ショットなど映画のようだ。テレビドラマでこのスケールは何?
 肝心の俳優陣について、「射鵰英雄伝」「天龍八部」と、ほぼイメージどおりですごい!と思ったものだが、今回はそれほどでもなかった。しかし、楊過役の黄暁明と小龍女役の劉亦菲はどちらも頑張っていて、とてもよかったと思う。特に楊過は、私が黄暁明を贔屓にしているのを割り引いてもなかなかの出来だと思うのだが、どうだろう? 年齢的に少年時代はいくらなんでもムリがあり、最初のうちは見ていて苦しい。しかし、ドラマの進展とともにどんどんかっこよくなる。実は大根っぽいと心配していたのだが、うまくなった。後半はかなりマジで感動させられた。
 女優陣では、なんといっても郭襄役の楊冪ちゃんが可愛い! 物語的にもまるで少女マンガから抜け出してきたよう。あまりの可愛らしさ愛らしさに、小龍女のことはかなりどうでもよくなってしまった。再会後の展開は大急ぎだし、劉亦菲は最初からあれだけ頑張ったのに、最後でちょっと損したかな。
 郭靖(王洛勇)は李亜鵬のイメージが残っていたので、最初はちょっと違和感があった。ずいぶん早口になったなあと。なんだか嫌いな孔琳が大好きな黄蓉役と知った時にはかなり萎えたものだが、結果はせいぜい可もなく不可もなしといったところ。公孫止(ケニー・ビー!)と裘千尺(李明。男優です)夫婦の怪演に拍手! そしておちゃめな鵰兄に一票!(ヤケ)……全体的に衣装やヘアスタイルは、いまいち。
 音楽はますます支離滅裂(※2)。美しいオリジナル曲もあるが、加えて「笑傲江湖」「射鵰英雄伝」「天龍八部」の曲……。ジョン・ウィリアムズっぽい曲には興ざめ。他にも違和感のある曲があったので、音楽をあちこちから寄せ集めているような気がする。さらに、挿入歌の一つに斉豫の「欲水」(映画「シュウシュウの季節」の挿入歌……)。クレジットがどこにもないのはなぜだろう。(あとで知ったが、ハリポタ、ロード・オブ・ザ・リング、そして浜崎あゆみの曲が使われているらしい。映画を見ていないので知らなかった。ジョン・ウィリアムズっぽいのではなく、そのものだったのね。浜崎あゆみも全然聴かないので……。)
 それにしても。つっこみどころ満載なのはいつも通りだが、そういう以前にケアレスミスとしか思えない粗がこれまでになく目立つ。いちいちあげていったらきりがないが、あそことあそことあそこだけは絶対に許せない! ……まったく、これだけすごいものを作っておいて、どうしてこんなつまらないミスをするかな。そこが中国らしいといえばらしいけど。
 これだけハマって見ておいて、文句ばかり書いてしまった(言いたいことはまだまだある)。いや、悪い出来では決してない。合格点をあげていい。素晴らしいシーンもたくさんあって、気に入った場面を繰り返し見てます。それだけに、余計歯がゆい。(2006年4月)

悪口をいっぱい書いたお詫びに、お気に入りのシーンを一つ。

第38集より。楊過は花を摘んでしみじみ眺めながら、つぶやく。「如此小花却也開得這般燦爛」。……この台詞にはじ~んときました。

※1 私が見た大陸版VCDでは全48集に編集されていたが、実際の放送は全40集ほどらしい。どうりで1集が短いうえに毎度終わり方が唐突だった。DVD、VCDとテレビ放送では編集が違う箇所もあるとかで、全く中国はわけがわかりません。

※2 日本版DVDは、劇中音楽がかなり違った。日本では権利関係がクリアできなかったのか。新しい曲がドラマに合っていない気がするのは、中国版をさんざん見たので単に慣れのせいだと思いたい。
 張紀中よ、「鹿鼎記」ではちゃんと作曲家を使ってくれ!(2006年9月30日)

キャスト
楊 過:黄暁明/小龍女:劉亦菲/郭 靖:王洛勇/黄 蓉:孔 琳/李莫愁:孟広美/公孫止:鍾鎮涛(ケニー・ビー)/郭 芙:陳紫函/郭 襄:楊 冪/郭破虜:銭 博/金輪国師:巴 音/武敦儒:王 寧/武修文:趙錦涛/耶律斉:趙鴻飛/公孫緑萼:傅 淼/耶律楚材:張紀中/霍 都:高 虎/陸無双:楊 蕊/程 英:王 嘉/甄志丙:程皓楓/趙志敬:劉乃藝/欧陽鋒:翟乃社/周伯通:趙 亮/孫婆婆:李明啓/耶律燕:饒 敏/完顔萍:孫[金里]華/裘千尺:李 明/忽必烈:袁 苑/馮默風:黒 子/瑛 姑:梁 麗/一 灯:王衛国/慈恩(裘千仞):呂士剛/洪七公:大 力/柯鎮悪:馬傑林/小楊過:小叮当/鹿清篤: 田 重/朱子柳:穆立新/邱処機:陳継銘/武三通:李中華/洪凌波:趙丹丹/達爾巴:周 剛/魯有脚:張衡平/黄薬師:于承恵 ほか

スタッフ
出品人:馬中駿、蒲樹林、遅晨曦、鉄佛
総監製:杜大寧、徐 露、周 莉、張惠建
総策劃:王鵬挙、楊文虎、肖 泉
芸術総監:馬中駿
総美術:杜長順
編 劇:劉 毅、王雪静、譚 嵐、郎雪楓
導 演:趙 箭
武術編劇:趙 箭、林 峰
撮 影:葉志偉、顧其銘
製片主任:宋亜平、闕 新
総製片人:張紀中
総導演・総撮影:于 敏

主題歌
片頭歌:「天下無双」  作曲:趙彤/作詞:樊馨蔓、時勇/演唱:張靚頴
片尾歌:「江湖笑」  作詞・作曲:小蟲/演唱:張紀中、周華健、胡軍、黄暁明、小蟲
主題音楽:「龍女之声」  作曲:趙彤/編曲:趙彤/演唱:樊竹青
挿曲:「双飛」  作曲:小蟲/作詞/姚若龍/演唱:黄暁明、叮当
    「問世間情為何物」  作曲:周志勇/演唱:張芯

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