日月凌空

全62集/2006年

 劉暁慶が再び武則天を演じる歴史大作、と思ったら、とんでもない駄作であった。長さだけは十分に大作だが。道理でいつまでたっても中国で放送されないはずだ。
 最大の欠点は脚本。これはひどい。プロットがいちいち雑で、楽しめない突っ込みどころがありすぎ、発展性のない繰り返しが多くてうんざりする。台詞は多いが無駄が多く、内容も薄っぺらで、前後の整合性がない。「武三思殿下」「許敬宗大人」「李弘太子」など、いちいちフルネームを呼ぶのは変だろう。誰彼かまわず万歳を唱えるし。もしかして脚本家は素人なのではないかとまで思った。そして演出が下手くそすぎて、脚本のダメさをさらにパワーアップさせる。カメラワークが古めかしく編集もダサく、これはもう俳優の演技がまずく見えるレベル。
 物語上の主人公は一応、武則天ではなく、黄聖依が演じる謝瑶環のようだ。少なくとも前半は。(後半は出番もあまりない。)このキャラが実につまらない。ちなみにこの謝瑶環という人物、本作のでっち上げではなく、ちゃんと元ネタがあるらしい。きちんと調べてみたい気もするが、このドラマの後ではどうにも気力が湧かない。このヒロインだけでなく登場人物全般に魅力が乏しく、ストーリーと有機的に結びついていないキャラが多い。唯一の取り柄は、劉暁慶の年齢を感じさせない美貌と存在感。彼女の出番だけを繋いだプロモーションビデオでも見れば、そのほうが余程面白いはずだ。
 セットや衣装など、パッと見には大作感はあるものの、それがかえって空しい。見始めてすぐに「これはハズレだ」と確信したが、意地で見続けた。大変な苦痛だった。せめて無駄を省いて、半分くらいの長さにして欲しかった。頑張った甲斐あったか、最終回であっと驚く展開があるにはあったが、全く楽しくもなければ、納得もできなかった。こんなダメドラマを始めから終わりまで見通した自分をバカだと思う。(2011年5月)

あらすじ
 父・謝敖と姉とともに蜀から長安に出てきた謝瑶環は、父の友人である上官儀の屋敷に一家で逗留していた。病弱な高宗に代わって政務を見る皇后武氏に憧れていた謝瑶環だが、武三思らの横暴を見て、突然皇后を悪魔呼ばわり始める。そして上官儀が武氏を廃そうとして一族もろとも処刑されるのに憤り、友人らと処刑場に乱入し、上官儀の息子の妻・鄭氏と生まれたばかりの赤ん坊(上官婉児)を救う。恐れを知らず権力者にたてつく謝瑶環を気に入った武氏は、彼女を取り立て尚方宝剣を与える。……

キャスト&人物紹介
武則天:劉暁慶
  本作では、40歳から82歳での死まで。もちろん立派な女性、施政者として描かれていて、時々愚かになるのは、キャラ設定ではなく、単に脚本の都合と思われる。太宗の後宮や感業寺に居た時のことを自慢げにペラペラ話すのはどうかと思う。

謝瑶環:黄聖依
  謝敖の娘。武則天に気に入られて重用され、尚方宝剣を預かることになる。主役の割には、出てこないほうがいいキャラ。しかも、黄聖依ってこんなに演技が下手だったんだ!と思わされた。

李治(高宗):馬暁偉
  まあイメージ通りか。

賀蘭敏之:焦恩俊
  今は亡き韓国夫人(武則天の姉)の息子。母親が武則天に殺されたと信じている。こいつが出てくるたびに不愉快だった。

賀蘭敏月:張舒羽
  賀蘭敏之の妹。高宗に愛されるが、叔母である武則天を恐れ、泣いてばかり。うっとうしい。

上官儀:劉文治
  謝敖と親しく、長安に出てきた謝父娘は上官家の客分となっている。反武則天派の筆頭。武則天は彼を詩人として高く評価している。

李  勣:侯永生
  本作では、武則天を太宗の後宮に入れたのもこの人で、その後も武則天ととても親しい。フィクションだと割り切らねばと思っても、なんだかな~。

謝  敖:李道君
  謝瑶環と謝瑶偉の父。巴蜀出身の名医で、宮中でも重用される。

謝瑶偉:文  清
  謝瑶環の姉。駱賓王の婚約者。

許敬宗:郭景華
  宰相。こんな立派な人だったっけ? 太宗時代からの重鎮で武則天派。とりあえず(劉暁慶を別にして)演技が一番見応えがあったのはこの人か。

裴  炎:趙守凱
  上官儀の後を継ぐ反武則天派だが、途中からどっちつかずに。

狄仁傑:劉偉明
  もちろん武則天派で、とても立派で有能。謎解きはしていない。

武三思:劉向京
  武則天の甥(異父兄の子)。ものすごく分かりやすい悪役。武氏による王朝乗っ取りを考えている。

陳子昴:姜  峰
  謝瑶環の友人。一応、できる人物という設定にもかかわらず、軽い口先だけ野郎に見える。今後、陳子昴の詩を読む時にこのドラマを思い出したら困る。

周  興:張  欣
  酷吏。大理寺の長官。最初と最後以外は常に来俊臣とセット。

来俊臣:鐘  紹
  酷吏。上官儀による廃后計画を武則天に密告したおかげで、出世。その後は周興とセットで武三思らとつるむ悪役。

鄭  揚:孫藝峰
  太学生は世をしのぶ仮の姿で、本名は楊正。隋の皇族の末裔で、隋王朝復活のために暗躍しているが、謝瑶環を愛してしまう。

鄭  嵐:付于幸子
  鄭揚の従姉妹で、隋王朝復活プロジェクトチームの仲間。鄭揚に片思い。

楊  伐:馬玉成
  隋王朝復活プロジェクトチームのリーダー。かなり人非人。

武団児:龍一儀
  もと武氏の戸婢で、武則天の側近。謝瑶環に自分の地位を奪われると思い込み、謝瑶環を陥れようとし、武三思の手先となる。

明崇儼:羅維倫
  不良道士が武三思に取り入って、うまいこと高宗や武則天の信頼をも勝ち得て出世。見た目からすることなすことすべて下卑ている。

馮小宝(薛懐義):顧海濱
  明崇儼と同じ穴のムジナ。怪しい新興宗教の教祖っぽく見える。坊主ではなく、道士? 一応史実にかすってはいる。

李敬業:沈  贏
  李勣の出来の悪い孫。反武則派で、後に反乱を起こす。

李  譔:李翰均
  太宗の息子、高宗のおじさん。帝位を狙って長年準備をし、ついに反乱を起こす。

精  衛:魏潔湘
  李譔の配下の女。武則天暗殺に挑む。(帝位のために、自分ではなく皇后を狙われる高宗も哀れ。)

駱賓王:楊  子
  長安主簿。有名な文人。謝瑶偉の婚約者で上官儀の弟子? こいつの詩文も当分読みたくない。

仙客来:謝  俐
  北胡都督府の女官。謝瑶環らと仲良しになりいろいろ協力、後に武則天に仕える。が、そもそも何のために長安にいたのか?

王  勃:沙柏寧
  陳子昴らと並んで詩壇四傑の一人。謝瑶環に求婚してふられるエピソードに説得力がなく、そもそもこの人の出番に意味があったか? もうドラマに有名詩人を出すな! みんなイメージが悪くなる。

喬知之:李宗翰
  出番ちょっとのゲスト出演。碧玉事件をアレンジしての登場。

賽紅拂:時代美
  賀蘭敏之の寵姫。

王伏霊:陳  辰
  武則天に仕える宦官。

武懿宗:于  栄
  武三思の甥? 常におじさんにくっついて悪いことをしていた。

李  弘:鄒元灘
  高宗と武則天の長男。皇太子。体が弱い。

李  賢:許聖楠
  高宗と武則天の次男。名前通り賢く性格もよい。謝瑶環に片思い。

李  顕:張暢(童年)/周航(成年)
  中宗。高宗と武則天の三男。二人の兄に比べて出来が落ちるにしても、いくらなんでも惰弱すぎる。

韋麗娘:程莉莎
  皇后の座を狙って李顕の気を引いて妃に納まり、李賢を陥れようとする。目的のためには武三思をもたらしこむ。権力欲と悪知恵だけは一人前。

金山酋長:包徳馨
  北方の遊牧部族の酋長。

花吉娜娜:関暁彤(童年)/劉紅利(成年)
  金山酋長の娘。金山部落との友好のため、李顕の許嫁になる。で、彼女の出番はあれで終わりかい!

太平公主:張  笛
  高宗と武則天の娘。皇太女になりたがる。

上官婉児:斉雪庭(童年)/張楊(成年)
  上官儀の孫娘。上官儀一族が処刑された時、謝瑶環らに母親とともに助けられた。長じて武則天の秘書になる。以上、女優がみんな美人だったのだけが救い。

スタッフ
編  劇:呉因易
出品人:邵文林、暁春、李建国、韓明坤、高小平
総監製:周莉、譚亜、袁源
監  製:劉旭東、郭暁偉、周敏
総策劃:肖泉、龔珍国
策  劃:韋暁芬、宋軍
撮  影:葉志偉、于長江、李雪
総美術:路奇
執行美術:単周
美術設計:李姚橈
副美術:劉作惠
化粧設計:陳敏正
特型化粧:楊瑾
特邀化粧:毛戈平
燈光設計:雷子
服装設計:鍾佳妮
武術指導:李暁強、王永鑫
B線導演:劉磚
執行導演:白秋林
副導演:程紹剛
剪  輯:薄建利
特  技:胡世翔
現場製片:李明新
外聯製片:孫玉泉
生活製片:梁寧華
作  曲:許明
置  景:李鳳君
舞踏設計:趙吉
道具設計:賈玉成
製片主任:王海峰
製片副主任:張麗娜
製片人:靖軍、趙治平
導  演:路奇
芸術総監:劉暁慶

主題歌
片頭歌曲「千年之後」  作詞:関山/作曲:趙潔/演唱:姚貝娜
片尾歌曲「我是日月一瞬間」  作詞:唐羅生/作曲:許明/演唱:劉小幻
片中歌曲「如意娘」  作詞:武則天/作曲:許明/演唱:金英子、沈燿
片中歌曲「剣器歌」  作詞:佚名/作曲:許明/演唱:沈燿、金英子

上 へ   電視劇一覧   トップページ