鑼鼓巷

全36集/2009年

 清末から新中国成立までの約45年間にわたる、宮中から持ち出された国宝を巡る三家族三代の人々の人間模様を描くドラマ。地味ながら丁寧な作りで、期待値がそれほど高くなかったせいもあるが、かなりの拾い物だった。タイトルであり物語の舞台でもある鑼鼓巷は、特に南鑼鼓巷が今やすっかり有名観光地になっているが、ドラマはたぶんそれとは何の関係もない。(胡同の名前など実在の名が出てくるので、行く前にドラマを見ておけばもっと楽しめだたろうに!)
 光緒30年(1904年)、紫禁城に盗賊が入り、英国の使節への贈り物として準備されていた品の一部が盗まれる。盗難品目録を作成した辛文遠(王剛)は、残された品物の中に国宝級の金鑲玉(玉を金で飾ったもの)の観音像を見る。これを外国人の手に渡してはならぬと決意した辛文遠は、観音像をこっそり持ち出すが、警備をしていた程鷙(劉威)がそれに気づく。内務府で当直だった呉廷語(徐福来)は斬首され、家族は流罪に。程鷙は西太后に辛文遠の所業を訴え辛家を捜索するが、辛文遠は家族を逃がし、観音像の在処を明かさぬまま自殺する。やがて時代は清朝から民国に変わり、姿を隠していた辛文遠の長男・辛書翰(丁志誠)は、一家そろって元の屋敷に戻ってきた。同じ鑼鼓巷には、程鷙も呉廷語の遺族も居住し、しかも程鷙は頑なに職務を果たそうと観音像の行方を気に掛けていた。辛、程両家は仇同士のような状態となり、一方、辛家は呉家と縁組するが、それがまた不幸の始まりとなるのだった……。
 以後、辛家に隠された国宝を手に入れようとする人々の思惑が、辛家にさまざまな軋轢や事件をもたらす。その中で、好むと好まざるとにかかわらず、辛、程、呉の三家の運命が絡んでいく。次々に降りかかる災難を辛家はどう乗り切るのか、観音像は果たしてどこに隠されているのか。そして、父の遺言に従い観音像を守り続ける辛書翰と、あくまで観音像を取り戻そうとする程鷙の虚々実々の駆け引き。ドラマは想像通りの大団円で締めくくられるが、ラスト近くで慌ただしく話を畳んだのはやや残念だった。しかし、時代の変遷を背景に、時にサスペンスチックに、時にメロドラマチックに、大勢の登場人物を巧みに動かしつつ語られる物語、なかなか見応えがあった。
 当然、俳優陣はそれぞれいい演技をしている。お目当ての王剛はわずか冒頭2話のみで退場。劉威は、当サイトの俳優紹介コーナーに加えている割には、実はそれほど好きではなかったのだが、いい俳優さんだなあと初めて思った。丁志誠も堅実ないい演技をしており、何があろうと秘密をじっとひとり胸にしまい、45年もの歳月を耐えて守りとおす主人公の姿は、なかなかに感動であった。ちょっと驚いたのが張耀揚(ロイ・チョン)の出演。香港映画ではおなじみの俳優で、コアな香港映画ファンには支持されていると思うが、、私この人どうも苦手。それに北京人の役にはやや違和感がある。それでも香港映画では決して見ることができないだろうロイ・チョンの姿は新鮮だ。また、ベテラン陣はいうまでもないが、大勢出てくる若手俳優が皆きちんと仕事しているのもかなり見物だった。(2012年1月)

あらすじ
 光緒30年、紫禁城から宝物が盗難に遭い、警護していた程鷙と当直の呉廷語は死を覚悟する。盗難品目録を作成した辛文遠は、密かに国宝の観音像を鑼鼓巷の自宅に持ち帰る。辛文遠の真意は観音像を守ることにあったが、程鷙は辛文遠を賊と信じ、観音像を取り戻そうとする。呉廷語は斬首され、辛文遠は長男の辛書翰に観音像の守護を託して自殺。程鷙は盗難品の捜査を続けるもかなわず、片脚を折られて追放された。やがて時代は民国となり、辛書翰が家族とともに元の屋敷に戻ってくる。しかし程鷙が相変わらず観音像を取り戻そうとしており、落ちぶれた呉廷語の遺族も同じ鑼鼓巷に住んでいた。辛夫人は、長男・辛書翰と李秋萍、次男・辛書恒と呉廷語の娘・呉盈珠との縁組を決め、二組の婚礼が執り行われる。しかし辛書恒は幼い頃から李秋萍を好きだったため夫婦仲がうまくいかず、そこを観音像を狙う程鷙の息子・程大羽につけいられることになる。……

キャスト&人物紹介
辛書翰:丁志誠/(少年)李徳龍
  辛文遠の長男。父の死後は辛家の長として一家をまとめ、父の遺言に従い観音像を守り続ける。書画の達人。

程  鷙:劉  威
  光緒期は御前帯刀侍衛だった。後に呉振業とともに鏢局を経営。観音像を取り戻すため辛家を監視し続けるガンコ親父。

辛文遠:王  剛
  観音像を外国に渡すまいと宮中から持ち出し、しかるべき持ち主に引き渡す日まで守るよう長男の辛書翰に託し、自殺する。

李秋萍:滕麗名(ジョイス・タン)/(少年)趙麗頴
  辛書翰・書恒兄弟とは幼なじみ。辛書翰の妻となり、夫を支え続ける。

辛書恒:葉  静/(少年)王子一
  辛書翰の異母弟。李秋萍をずっと好きだったため、結婚が決まって以来すっかり暗くなり、前半はかなりダメ男。映画館を経営。

程大羽:張耀揚(ロイ・チョン)/(少年)劉凱年
  程鷙の息子。上司の妾の姚碧桃と出来てしまい、ぐるになって辛家の国宝を狙う。それが呉盈珠をたらしこんで探させようというゲスなやりかた。結局ことがバレて東北へ逃げるが、戻ってきてからは別人のように。

辛夫人:朱  琳
  辛文遠夫人、辛書翰の母、辛家のゴッドマザー。孫(と信じている)の辛思徳を甘やかす。

呉盈珠:陳  蓉/(少年)郝  運
  呉廷語の娘、呉振業の妹。辛書恒に嫁ぐが、夫とうまくいかず暗い毎日だったため、程大羽と姚碧桃の企みに手もなくひかかってしまう。程大羽の子(辛思徳)を産んで死亡。

蒯管家:袁  苑
  辛家の管家。辛文遠に長く仕え、事件の際も事件の後も辛家のためにひたすら身を粉にして尽くす。

程夫人:岳  紅
  程鷙の妻。

辛思徳:鄒俊百/(少年)謝  豪
  呉盈珠と程大羽の息子、表向きは辛書恒の息子。特殊な環境で育ったせいか、すっかりぐれてしまった。

陳錦程:方暁鴿/(少年)崔明浩
  辛家の子供たちとは幼なじみだが、皆の嫌われもの。辛家の国宝を狙い、辛思慧と結婚しようとする。この俳優、原作者夫婦の子息だそうだが、あえて性格の悪い悪役を演じた心意気やよし。

蒯  興:肖  聡/(少年)郝晒冬
  蒯管家の息子、父の死後は管家となり、同じく辛家に尽くす。妻の小翠が辛思徳第一なのが不満。もちろん辛思徳を嫌っている。

小  翠:陳  捷
  呉盈珠の侍女、その死後は辛思徳の乾娘になり面倒を見るが、呉盈珠への忠誠心が強すぎて辛思徳を猫かわいがりする。蒯興の妻となる。この女優さん、少女時代から老け役までうまい。

姚碧桃:張文慈(ピンキー・チョン)
  伍帥長の六姨。伍帥長から逃れたくて、程大羽とともに辛家の国宝を手に入れて逃げようとするが、程大羽の心変わりによって計画失敗。後に復讐に現れる。この復讐パート、展開にちょっと無理があるような。

姚碧竹(周眉):甘婷婷
  姚碧桃の妹。後に姉の復讐に協力し、辛家の国宝を手に入れるため名前と身分を偽り辛書恒に近づく。新版「水滸伝」の潘金蓮。

孫  氏:郭  虹
  呉廷語の長男・呉振邦の妻、呉志遠の母。夫の死後は姑を世話し、息子を女手一つで育てあげる。後に夫の弟の呉振業と再婚。

呉振業:曹克難
  呉廷語の次男、呉盈珠の兄。程鷙とともに鏢局を経営する。好漢だと思うが、あまりつっこみどころが思いつかない。

李士傑:艾  偉
  李秋萍の兄。清朝時代も役人だった。民国になってからは警察のけっこうお偉いさん。辛書翰とも親しく、辛家の危機には必ず協力してくれる。

呉志遠:柯博龍/(少年)朱  凱
  呉廷語の孫、孫氏の息子。長じて辛家が経営する骨董店を任される。呉烟霞の父。

辛思聡:張  凱/(少年)鄧若男
  辛書翰の長男。まじめで出来がよかったが、抗日運動も程藝玲との結婚も家族に反対され、ともに家出して抗日戦に身を投じる。

辛思懿:李詩瑶/(少年)陳雅煕
  辛書翰の長女、辛思聡の妹。怠け者の出来の悪い娘で、劉有財に嫁いでからもそれは変わらず。それにしてもひどい親不孝者だ。

辛思慧:蒲冰墨/(少年)楊志雯
  辛書翰の次女。素直でかわいくて、おまけに美人。蒯小軍が好き。

蒯小軍:張寧江/(少年)田嘉文
  蒯興と小翠の一人息子。辛家の子供たちと一緒に学校にも行かせてもらい、ずっと辛思慧のボディーガード状態。辛思慧が好き。

程藝玲:柴晶晶/(少年)呉詩語
  程大羽が東北にいる間にもうけた娘。辛思聡と両思い。たぶん難しいことは分かっていないけど、とりあえず恋人について行っちゃった。

劉有財:李  強
  辛家の子供たちと幼なじみ、後に辛思懿の夫。役立たずの出来損ない。

呉廷語:徐福来
  事件当夜にたまたま内務府の当直だったため、斬首される。気の毒……。呉振業、呉盈珠の父。

呉夫人:許  娣
  呉廷語夫人。事件の際、逃げるよう勧められてもあえて動かないなど気丈なところがあるが、流罪生活で体を壊し、病気がちに。

陳士紳:王奎栄
  陳錦程の祖父。辛家の国宝を狙い続け、辛思慧を陳錦程の嫁にもらおうとする。

王桂蘭:魏  璐
  呉志遠の妻、烟霞の母。

呉烟霞:肖  涵
  呉志遠の娘。まじめ人間ばかりの呉家でひとり享楽的で軽い性格。

伍帥長:程六一
  軍閥のお偉いさん? 部下の程大羽に唆されて辛家の国宝を手に入れようとする。

酒井一郎:舒耀瑄
  表では骨董屋を経営し、辛思徳を利用して辛家の国宝を手に入れようとする悪い日本人。常に蝶ネクタイ。部下(?)にはなんちゃってサムライもいる。

スタッフ
出品人:劉燕銘、白芳芹、張景岩、高希華
総監製:張蘇洲、趙智江、孔炯、余瑞金、陳向栄
総策劃:鄒暁利、肖融、曲光輝、楊徳建、続文利、趙浚凱、李瑛
監  製:金利群、黄剣平、艾民、鄭婵燕、陳鉄銘、蒋暁栄、唐莉莎
策  劃:張瓊、張欣、屈洪波、王冰、成暁明、閻旻、羅小鳳、楊春風
編  劇:顔珍、龔応恬
原  著:顔珍、方子哥
撮影指導:高成崗
美術指導:崔俊徳
作  曲:黄小秋
録音指導:楊暁松
統  籌:徐健
制片主任:蒋小紅
制片人、发行人:張小军
総製片人:蒋訳霆
導  演:余丁

主題歌
片尾歌「我心不改」 作詞:王冰/作曲:黄小秋/演唱:陽光

上 へ   電視劇一覧   トップページ