李衛当官

全30集/2001年

 「雍正王朝」からスライドした作品。「雍正」の脇役だった李衛を主人公に、コメディタッチで腐敗役人退治が描かれる。四爺(後の雍正帝)や康煕帝をはじめとする「雍正」の人々、十三爺、年羹堯、悪役の八爺、九爺、十爺など「雍正」で重要な役割を担った人物がそのまま登場しているのが嬉しい。「雍正」のシナリオを手がけた劉和平が芸術総監督とシナリオを兼ねており、「雍正」とは全くカラーの違う作品であるにもかかわらず、文句なく面白く、質の高い仕上がり。ただセットや衣装は少々安っぽくなったような。
 ただし肝心の李衛は趙毅から徐崢に交代、キャラも設定も変わっている。そして実は、本作と「雍正」の物語や設定との整合性はかなりゆるい。また、新たなヒロインとして岳思盈(陳好)が登場。(それはいいのだが、翠児の出番は全くない。これでは翠児の立場がないな。かわいそう。)
 面白さの第一は何といっても、読み書きすらできず、チンピラまがい、しかし根っこには正義感を秘めた李衛が、口八丁手八丁と肝っ玉を武器に、悪い奴らをやっつけ、偉い人たちをぎゃふんといわせる、その痛快さ。
 江南で堤防工事をめぐって不正が行われ、四爺と十三爺が欽差(大事を処理するため勅命で派遣される)となり、お忍びで調査に赴く。そこで不正を告発したために殺された役人の娘・岳思盈と、不正の結果起こった洪水から逃れてきた乞食同然の李衛らと出会うのが物語の発端。やがて欽差に化けた李衛は後ろ暗いところのありすぎる役人たちを振り回すことになるが、事態は次第に李衛が思いもしなかった大事に発展していく。四爺は李衛を隠れ蓑に利用するのだが、このあたり、李衛がヘマをしたらあっさり切って捨てそうで、なんだか敵より怖い。やがて事件解決に貢献し、欽差に化けた罪も赦された李衛は、四爺の門人となり、蘇陽県の県令に任じられる。そして今度は自らも役人として堤防工事をめぐる汚職を摘発。3年の任期を勤めあげた後は、揚州知府に昇進し、不正を行う塩商たちと彼等と結託する役人たちの汚職を調査し、塩税の脱税分を追徴しようと奮闘する。
 いずれも官界のしきたりも読書人のやり口も政治向きのことも分からないままの李衛が、それゆえにかえって他人には思いつかない方法で困難を解決していく。しかしだんだんと、それだけはすまなくなってきて……。
 役人たちの汚職、商人たちの不正や脱税問題、そして自分ひとりが正道を行くことの難しさ。この手のドラマの常道として、現代中国への警鐘にもなっていて、笑えるだけでなく、奥行きもある作品になっている。もちろんそんな余計なことを考えなくても、充分に娯楽作品として楽しめる。(2007年10月)

あらすじ
   江南道御史・岳子楓は堤防工事をめぐる不正を告発し、その黒幕である皇太子(いったん廃されて復位した後)の命で殺害される。娘の岳思盈は弟の小満を連れて逃げる途中、洪水から母とともに江都県に逃げてきた李衛に出会う。李衛の母と小満が捕らえられ処刑されそうになった時、李衛は欽差に化けて処刑場に乗り込み二人を救う。半信半疑の役人どもに監視され逃げるに逃げられなくなった李衛だが、岳思盈のために、「欽差」の立場を利用して殺人犯と黒幕を突き止めようとする。これらの李衛の言動は、本物の欽差である四爺と十三爺にしっかり観察されていた。やがて李衛に身分を明かした四爺らは、李衛を利用して不正の証拠を掴もうとするが、黒幕が皇太子であるため、事件は皇帝の後継者争いにつながる大事に発展してしまう。そこに関わってしまい、何より欽差に化けるという大罪を犯した李衛は、いったんは死を覚悟する。しかし事件解決後、四爺らのとりなしのおかげで李衛は罪を許されたばかりか、康煕帝にも気に入られ、蘇陽県の県令に任じられる。そして今度は役人として、正面から堤防工事にかかわる汚職問題に立ち向かうことになる。……

登場人物&キャスト
李 衛:徐 崢
 父を早く亡くし、母親とふたりで苦労してきたらしい(「雍正」で仲間だった高福も翠児もいない)。博打好き、サイコロの腕はイカサマを含めて確か。最初は四爺らに「邪」と評されるが、岳思盈や四爺らの薫陶を経て「正」に傾いていく。四爺らに見込まれて、読み書きすらできないのに、県令、知府を務めることになる。岳思盈に片思い。

岳思盈:陳 好
 江南道御史・岳子楓の娘。殺された父の無念を晴すため力を貸してくれた李衛に恩を感じる。李衛を救うためいったん結婚を約束するものの(欽差に化けたのは妻の父の死の真相を調べるための「孝」の行動だったとした)、結局は義兄妹ということになる。李衛の気持ちは分かっていても踏ん切りがつかないまま、それでもずっと協力を続ける。

李 母:李小燕
 李衛の母。息子の足を引っ張る言動が多く、時々愛想を尽かされているが、いざという時、やっぱり母親は偉大です。息子の嫁とりが悩み。

岳小満:楊昊飛
 岳思盈の弟。ちょっとませてこましゃくれた少年。内心ではすでに李衛を義兄とみなしているとおぼしい。演じているのは「雍正王朝」で弘暦(後の乾隆帝)の子供時代を演じた子。

石 榴:李 倩
 もと江都県令の家の小間使い。李衛の元にスパイとして送り込まれるが、結局こちらに居つく。李衛の母に気に入られ、死ぬつもりだった李衛も母の面倒を見てもらうために、いったん李衛の嫁になりかける。しかし、そのまま宙ぶらりんで小間使いのまま。

任南坡:李 屹
 岳思盈の父の友人だった。仕官せず悠悠自適の生活だったが、岳思盈の懇願もあり李衛に協力する。諸葛亮気取りのヘンな人と思ったら、本当に智謀の士だった。顧盼児にずっと片思いしているのだが、彼女の前では顔に似合わぬはにかみ屋。

顧盼児:文 博
 江南で有名な妓女。役人に売られそうになったところを偶然李衛に助けられて恩を感じ、何かと協力する。任南坡が李衛のために動くのも、彼女がお願いしたかららしい。岳思盈とも仲良し。

【以下、「雍正王朝」と共通する人々】
康  煕:焦  晃/四爺(後の雍正):唐国強/八爺(八阿哥・胤禩):王絵春/十三爺(十三阿哥・胤祥):王  輝/年羹堯:杜志国/太子(胤礽):徐  敏/九爺(九阿哥・胤[示唐]):苗海忠/十爺(十阿哥・胤[示我]):劉  魁/李徳全:楊洪涛
  2年ほどの間に、人によっては老けたり太ったり。

スタッフ
出品人:鹿松林、李徳福
総策劃:洪寿祥
策  劃:単蘭萍、劉和平、蘇斌、蒋雪柔、劉剛、何平、武小迪
顧  問:林光強、馮建文、王為璐、李征、杜斌国、高栄海
総監製:徐荘、王付合
総製片人:蘇斌
監  製:周易、蒋雪柔
芸術総監兼総編劇:劉和平
編  劇:毓鉞
導  演:鄭軍
撮影師:張世霖、蕭碧村
美術師:傅徳林、劉心剛
剪接師:顧国良
製作統籌:黎文彦

主題歌
片頭曲「身無牽挂胆気粗」  作詞:劉和平、毓鉞/作曲:張広天/演唱:関鵬

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