書剣情侠柳三変

全33集(※)/2004年

 「柳三変」って、もしや柳永のこと? まさか柳永が侠客にでもなって、詞を詠じつつチャンバラするのだろうか。……ハハハ、まさかね。でも、そうだとしたら見たいかも。いや、こわいかも。
 と、タイトルを見ただけで煩悶してしまったが、物語は想像以上にぶっ飛んでいた。柳三変はなんと南唐の後主・李煜の孫だという。詞はもちろん、武芸の腕も一流。やがてお国の再興を目指す戦いに、心ならずも巻き込まれていくのであった。
 実在の柳三変こと柳永(987?~1055?)は、北宋の詞人。若い頃は放蕩に身を持ち崩したが、その平易な詞は庶民に広く親しまれた。晩年にようやく進士に及第したが、地方を転々とし、落ちぶれたまま世を去った。李煜(937~978。在位901~975)は、五代十国の一つ・南唐の最後の君主。詞人として名高い。国が北宋に滅ぼされると開封に連行され、幽閉されたまま世を去った。太宗に毒殺されたともいう。
 ともに男女の情愛を描く艶っぽい詞を多く作ったこと、晩年に人生の転変を経て、憂愁に満ちた凄美な作品を残したこと、詞史に重要な地位を占めていることなど共通点がある。ドラマが二人を結びつけたのも伊達ではなかったかもしれない。
 劇中では、柳永の詞がいくつも詠じられ、メロディーに乗せて歌われる(音楽は張亜東!)。ちなみにヒロイン勢のうち、虫虫(何美鈿)、楚楚(胡可)、秀香(曹雪)は、実際に柳永の詞に出てくる妓女の名だそうだ。とはいえ、女性にモテモテなこと、科挙に落ちたことなど柳永らしいところも残してはいるが、ドラマと実在の柳永とは全く関係ない!
 ドラマはアクションあり、悲恋あり、コメディありのかなりお気軽なエンターテイメント。後半は悲劇的色彩が強まって、ちょっと暗めに。セットや衣装は立派。ただし、滑り出しは好調だったのに、柳三変が自分の出自を知る場面がずいぶんお手軽で、せっかく楽しく見ていたのにがっかりさせられた。このあたりから粗が目立つようになり、どんどん物語が破綻していく。最後まで解決しないままの謎もあったりして。台詞にもミスが多い。ネタバレになるが、柳三変の出生について最後にどんでん返しがあり、「そうか、詞の才能は祖父ゆずりというわけだな」と納得していたのに、あんまりだ~。
 柳三変を演じるのは林志穎(ジミー・リン)。「天龍八部」の直後の作品だ。白衣のスタイルといい、段誉役の成功に乗じて、彼のために企画されたドラマに違いない。江南でお国の再興を目指すとは、慕容復も入っているような(南唐は江南にあったから無理は少ないか)。とにかく、ジミーがひたすらかっこよく、かつ可愛らしく、おいしい場面を演じ続ける。詞を詠じる表情がぎこちないような気もするけど、言動がフラフラして頼りない、を通り越してなんだか支離滅裂だけど、憂い顔はあまり似合わない気もするけれど、全部許す、だってジミーなんだもの。と、別にファンでもない私をこんな気にさせるとは、ジミー恐るべし。(2006年10月)

※TVで見た時は全33集だったが、VCDでは変なところで回を区切って全41集になっていた。

あらすじ
 ある夜、宮中から南唐の後主が宋の太宗に献じた太阿剣が盗まれる。犯人は新昌の大仏寺の僧。実は南唐の旧臣で、寺ぐるみで南唐再興を狙っていた。柳三変は、何も知らずに大仏寺で武芸の修業中。ある日、銭塘の街へ出た柳三変は、名妓の楚楚と出会い恋に落ちる。一方、虫虫とも出会い、片思いされるようになる。お忍びで太阿剣を捜索する六皇子は反宋の陰謀に気づく。皇帝の弟・九賢王も南唐の残党の排除のため、また対立する六皇子をつぶすため暗躍する。やがて柳三変は上京して科挙を受験するが、父の柳宜が南唐の旧臣であるため、落第。やがて自分が柳宜の息子ではなく、南唐の後主の孫だと知らされ、盟主に祭り上げられてしまう。太阿剣が柳三変の手にあると知った九賢王と六皇子は、剣に隠された南唐の財宝を狙って柳三変をマークする。……

登場人物&キャスト

柳三変:林志穎(ジミー・リン)
 太子太傅・柳宜の息子。実は南唐の後主・李煜の孫だという。詞の名手としてすでにちょっとした有名人。少林寺の流れを汲む大仏寺で武術の修業をし、こちらもなかなかの腕前。本人は楚楚と幸せになることだけが望みだが、南唐再興の盟主に祭り上げられて困惑する。後に柳永と改名。

虫 虫:何美鈿
 「三度自分を助けてくれた男性に嫁ぐ」という占いを信じ、三度助けてくれた柳三変に、一途についてくる。身寄りもなく一人で江湖を渡ってきたらしく、「大侠」を自称。酒豪で性格も豪快。常に突拍子もない行動に出て仲間を心配させる。王夫人に弟子入りして、武術はかなりの腕前になる。「連城訣」の何美鈿が可愛い。

六皇子(太子):李宗翰
 皇帝の六男、太子となる。たぶん後の仁宗。切れ者のようで、時々すごくお人よしの甘ちゃん。銭塘で楚楚に夢中になり、柳三変とも親しくなる。政治改革を試み、叔父の九賢王と対立。九賢王のためいったん皇太子の座を追われ危機に陥るが、柳三変らと手を結んで九賢王を打倒、即位する。

楚 楚:胡 可
 白玉楼の歌妓。琴の名手で、柳三変の「望海潮(東南形勝)」の弾き語りが得意。実は南唐の後主・李煜の孫。柳三変と相思相愛になるが、母から六皇子に嫁ぐように強要される。胡可はきれいだが、常に暗い顔をしているので少々うっとうしい。名妓の割には時代劇の立ち居振る舞いも板についていない。

九賢王:午 馬(ウー・マ)
 皇帝の弟。自分の思い通りにならない六皇子が煙たく、廃太子を画策。実は自ら帝位を狙っている。その目的のため西夏を利用しようと、西夏王と密かに連絡を取る。さらに南唐の残党を一掃するため、また養子の徐舜欣を柳三変に殺されたことを恨み、柳宜と柳三変を亡き者にしようとする。

野利旺娜:陳怡蓉(タミー・チェン)
 西夏王の妹。江南にお忍びで遊びに来た時に出会った柳三変に、許婚がいるにもかかわらず恋する。宋と西夏との戦いの際に、柳三変が偽りの投降をしてきたため再会する。

潘媽媽:王 茜
 楚楚の母。妓楼・白玉楼のおかみ。実は、南唐の皇太子妃だったが、身を隠すため妓女になったらしい。楚楚が皇太子に嫁いでやがて皇后になった暁には、宋の皇室をのっとることができるともくろむ。時々ひそかに柳宜らと会い、指示を出している。

杜 寛:葉 鵬
 柳三変と出会い意気投合し、義兄弟になる。柳宜の信頼も厚い。九賢王のために家族を失っている。幼い頃に生き別れた許婚・李如雲を探している。

豆 豆:石 琳
 チンピラにやられているところを柳三変と虫虫に助けられ、柳家に入り込む。実は九賢王のスパイ。杜寛と相思相愛になるが、やがて彼女こそが李如雲であることが明らかになる。

柳 宜:管寿義
 南唐の旧臣だが、現在は太子太傅の職にある。後主の孫をわが子・柳永とすりかえて育てたのが柳三変だという。南唐復興のため陰で動いているが、やる気があるのかないのか、態度が今ひとつはっきりしない。その理由は最後に明らかに。

慧 通(右):魯継先/慧 能(左):杜玉明
 二人とも南唐の後主の護衛だった。現在は、浙江は新昌の大仏寺で僧侶に身をやつしているが、南唐の復興を志し僧兵を訓練している。慧通の本名は張朝英、慎重な性格、慧能の本名は李承稷、短気な性格。慧通は柳永の武術の師父。

王半仙(左):姚潤昊/怪婆婆(右):金 子
 王半仙は南唐の旧臣、今は流しの占い師に身をやつしている。たぶん文官で武術はできないと思っていたら、実はできた。夫人は武術の達人。虫虫にせがまれて弟子にし、娘のように可愛がる。それにしてもひどい役名だ。

呉一刀:何金霊
 九賢王の懐刀。武芸は天下一、というふれ込み。後半に片腕をなくしたが、何の意味もないと思う。

郭春海:郭宏杰
 六皇子の片腕。皇子が幼い頃から仕える忠臣。

秀 香:曹 雪
 怡紅院の妓女。重傷を負った柳三変を救い、そのために命を落す。


スタッフ
出品人:陳暁翔、魏平
総監製:賈暁晨、馮晨、楊文虎、裘翠定
総策劃:陳鴎、張燕生、胡大楚、張恵建、徐国安
総製片人:譚湘江
監 製:李培勇、李小国、蔡照波、林立昇
策 劃:何涛、年徳、何俊、沈恵萍、陳徳昌、王咏梅
制片人:江平
音楽総監:張亜東
編 劇:王智、関渤、王鵬
総美術:馮治平
制作主任:陳鋭
総導演:陳柏屹

主題歌
片頭曲「新望海潮」  作詞:昊向国/作曲:張亜東/演唱:蘇丹、林志穎(OPでは歌っていないが?)
片尾歌「新雨霖鈴」(寒蝉凄切)  作詞:柳永/作曲:張亜東/演唱:林志穎
挿 曲「望海潮」(東南形勝)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:張江、張華麗
    「昼夜楽」(秀香家住桃花径)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:姚貝娜
    「雨霖鈴」(寒蝉凄切)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:尹健
    「鳳棲梧」(佇倚危楼風細細)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:尹健
    「鵲橋仙」(届征途 携書剣)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:Wawa Band
    「西施」(苧羅妖艶世難偕)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:尹健
    「征部楽」(雅歓幽会)  作詞:柳永/作曲:張亜東、撈仔、林海/演唱:尹健

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