宰相劉羅鍋

全40集/1994年

 「羅鍋」とはせむしのこと。せむしで風采の上がらない主人公・劉墉が宰相となり、乾隆帝の寵臣・和珅をはじめとする腐敗官僚と戦うコメディ仕立てのドラマ。
 確認したわけではないが、中国のテレビドラマ史にとってもエポックメイキング的な作品だと思う。汚職役人や腐敗官僚をやっつける「時代劇風刺コメディ」(私が勝手に名付けた)というジャンルを切り開いた記念すべき第一作にして大ヒット作品。当時は主題歌があちこちで流れ、あやしげな関連書籍、みるからにパチもんのTシャツ、果ては袋にイラストが描かれた棒つきアイス(1元のわりに美味)まで、劉羅鍋グッズが巷にあふれていた。
   とんち話の数々に笑えるのはもちろんだが、風刺がきいているのがヒットの最大の理由だろう。お役人の腐敗や無能ぶりを斬るだけでなく、言論統制を露骨にちゃかした回など、よく放送できたものだと今見ても感心する。
 名優の名演、故宮、恭王府、避暑山荘などでロケした豪華な背景、美しい衣装、練られた脚本(これが案外貴重だ)、ウィットに富んだセリフのやりとり、ユーモラスな音楽などなど、10年以上たった今でも名作中の名作だ。難を言えば、映像がちょっと、というところがなくもない。カスティリオーネ、マカートニーなど外国人の扱いはもうちょっとどうにかならないか。作品全体から見れば小さなキズだが。
 2000年になってこのドラマを下敷きに京劇「宰相劉羅鍋」が製作されたことからも衰えぬ人気のほどが窺える。ちなみにこの京劇の評判も高い。(2006年3月)

あらすじ
 乾隆は六王の娘の霞児を後宮に入れようとするが、これを嫌った霞児は得意の囲碁で勝負して自分に勝った人と結婚すると宣伝し、次々と挑戦者を打ち負かす。山東から科挙のために上京した劉墉も挑戦、見事勝利するが、そこへ自ら横槍を入れてきた乾隆と対戦するはめになる。結局、科挙に合格すれば婿にすると六王は約束するが、和珅の不正のために不合格となってしまう。劉墉は一計を案じて乾隆に不正を知らせ、再試験で見事に状元になり、霞児と結婚する。才気と仕事ぶりが乾隆に認められて次第に出世し、有能な清官として名をはせ、持ち前の正義感から寵臣・和珅と不倶戴天の敵となり明に暗にわたり合う。時には乾隆の逆鱗に触れて降格され、宰相から城門の門番にまで一気に転落したり、あやうく死を賜る寸前にまで行ったりもする。晩年に職を辞し、乾隆の崩御と同時に失脚した和珅の死を見届けて故郷に帰る。

登場人物&キャスト

劉 墉:李保田
 劉墉は実在の人物で、詩文をよくし、書家としても有名。「劉公案」という小説もあるので、清官だったのも本当なのだろう。李保田は演技に定評のあるベテラン。思いきりデフォルメかつ計算し尽くされたコミカルな演技に目が離せない。歩く姿、せりふまわしだけでもう笑える。ドラマの成功は、この人の芸の力に負うところが大きい。

乾 隆:張国立
 和珅が小人だとはわかっているが離れられない。何かとうるさい劉墉を煙たく思いつつも名臣だとわかっている。本人は二人をうまく使いこなしている名君のつもり。真面目な君主でもあり、たまには羽目をはずすこともあり、世間知らずで抜けているところもあり、女好き、というキャラはこの後、張鉄林がたびたび演じる乾隆にも踏襲されている。これまで鳴かず飛ばずだった張国立はこの乾隆役でスターになった。

和 珅:王 剛
 見た目は小太りのひょうきんなおじさんだが、乾隆帝の寵を恃み、好き放題やりたい放題私腹を肥やし放題。皇帝より贅沢な生活をしている。劉墉を失脚させようと次々に策をめぐらす。王剛はもとキャスターで主演級の演技は初めてだったらしいが、そんなことはみじんも感じさせない堂々の演技。思いきりオーバーにコミカルに、皇帝にあられもない阿諛追従、悪巧みをしながらも何だか憎めない和珅を演じる。とにかく面白い!

劉夫人:鄧 婕
 六王の娘で囲碁の名人。後宮入りを打診されて、あわてて結婚相手を探すために囲碁による「比武招親」を行った。劉墉に嫁いでからは相思相愛で、間違いなく賢夫人。きれいで頭がよくてしっかり者で、そこはかとない色気を漂わせながら上品で、普段の立ち居振舞いから時たま見せる焼餅を焼く様子まで、すべてがキュート。

六 王:李 丁
 乾隆の叔父? 劉夫人の父。酒を常に手放さない。しかし良識と正しい現実認識能力を持ち、影に日向に婿を助ける。

銀 紅:李愛群
 科挙のため上京していた李靖と出会い恋に落ちる。その後、杭州で妓女となっていたが李靖に身請けされることに。しかし李靖が出家したため、劉墉の屋敷に引き取られ、李靖の迎えを待つ。そしてそのまま年をとってしまったらしい。気の毒。

李 靖(道済):陳 兵
 劉墉の友人。トラブルで科挙に失敗、失意のうちに杭州へ。銀紅を身請けする大金を工面するため、乾隆の御幸にあわせた臨時僧侶の募集に応募、金と引き換えに偽坊主となる。ところが才気煥発の受け答えが乾隆に気に入られて道済という法号までもらってしまい、還俗できなくなってしまう。銀紅を忘れられず、僧侶になりきろうにもなれず苦しみ続けたが、最後には悟りを開いたらしい。銀紅は待ち損だ。

胡 勝:洪宗義
 乾隆のあるところ胡勝あり。常に傍らに控えている宦官。

張 成:李嘉存/劉 安:李 煜
 劉家の召使い。二人とも主人の薫陶よろしきを得たか頭の回転が速く、芝居もうまい。でぶの李嘉存は有名な相声演員。

嫣 翠:邱 悦
 劉夫人に子供の頃から仕える小間使い。後に子供のできない劉夫人の肝いりで劉墉の妾になり、息子を産む。

江 妃:米 粒、楊 静
香妃のモデルになったウイグル出身のお妃。彼女に夢中になった乾隆がすっかり朝廷に出てこなくなったので、劉墉はなんとかしようと智恵を絞るが、おかげで乾隆の報復を招くことに。

塞貂蝉:王璐瑤
和珅のなじみの妓女。江妃の死後、落ち込んでいる乾隆の気を晴らそうと、和珅はお忍びで乾隆を彼女の元へ案内する。

スタッフ
出品人:潘洪業、張国軍
総策劃:褚時健、陳憲鑫、秦培春、陳柳泉
総監製:班長生、李柏漢、張鍇、邢籟、周偉思
藝術顧問:謝添、馮驥才、阮若琳
総編輯:張和平、秦培春
編 劇:秦培春、石零、張鋭、白樺
製片人:張国軍、辺暁軍、班長生
美 術:郝静遠、魏風
作 曲:王黎光
導 演:張子恩、韓剛
執行導演:朱徳承
撮 像:何青、王永

主題歌
作詞:張和平、暁成/作曲:王黎光/編曲:王黎光、盛華
片頭歌「清官謡」  演唱:謝東 (大ヒット曲!)
片尾歌「故事就是故事」  演唱:戴[女尭] (こちらもヒット曲)

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