康熙微服私訪記

全30集/1998年

 「宰相劉羅鍋」「慈禧西行」のスタッフが再び集ったヒット作。今度は張国立が康熙帝に扮して、お忍びで世の不正を正す。お供は、宦官の三徳子、僧侶の法印、寵愛する宜妃とその宮女・小桃紅。悪徳役人や政府高官が官帽の羽飾りと朝珠をはずされる(罷免のしるし)シーンがドラマのトレードマークだ。
 康熙帝といえば中国史上最高の名君の一人。それが民間では、世間知らずでちょっとお間抜け。このギャップがおかしい。常に大真面目に正論を振りかざし、書生くさい理想を語り、教訓的な台詞を吐く。そんなところが、おじさんのはずなのに青臭くて青年っぽい。考えてみれば8歳で即位しているので、純粋培養で案外本当にこんな人だったかもしれないと思ったりして。「この世にこんな苦しみがあるのを知らなかった」などと真剣に反省する康煕が、可笑しくもちょっぴり哀しい。演じる張国立はコミカルな演技は言うまでもなく、普通のおじさんっぽい風貌なのに気品も威厳もただよう。
 康熙の行動をはらはらしながら見守る宜妃らお供の人々の気遣いもなんともいえない。もっとも、彼らも充分楽しんでいるのだから、お互いさまか。
 物語ごとに必ずうら若い美女がヒロインとして登場し、康煕との恋が語られるのはご愛嬌。それに対する宜妃の嫉妬ぶりも見ものである。
 不思議なのは、朱旭がオープニングにも顔を出しているのに、第一回目の冒頭に登場したきり。何のための出番だったのだろう。何度か出てきた四阿哥は後の雍正帝だが、いかにも小才のきくずるそうなタイプ。雍正帝ってこんなイメージなのか。
 全体的に含蓄のある台詞が主体のドラマで、上品で典雅な雰囲気ですらある。ちょっと物足りないのは、皇帝の正体をばらす場面。もっと派手に演出してもいいのではないか。みんながびっくりする様子をもっと見せてほしい。そう感じるのは「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」を見て育ったせい?(2006年5月)

あらすじ
「犁頭記」 全7集(第1集~第7集)
 康煕43年。山東・五蓮県の県令・羅世長は、北京へ送られるはずの税糧を勝手に農民に分配したとして逮捕される。羅世長の娘・錦紅は、父の冤罪を晴らそうと男装して青州府へ訴えにくるがうまくいかず、偶然丐幇に入り、父親を助けようとする。羅世長の上奏文を目にした康煕は、ひそかに青州へ来て乞食に化けて事情を探るが、見るもの聞くもの驚くことばかり。

「銅鼎記」 全7集(第8集~第14集)
 若い宦官が宮中の銅鼎を盗み、自殺する。同じ頃、日雇い工の若者・連鎖は、身寄りも家もなくした老婆を助け、連れ帰って母親として世話をする。ある日、城楼からあやしげな家を見かけた康煕らがその家を探していると、薬屋の盗賊騒ぎに出くわす。一見何の関係もない出来事が次第に結びつき、やがて宮中の物が内務府総管によって盗み出されていることがわかってくる。

「八宝粥記」 全9集(第15集~第23集)
 満人と漢人の対立に気づいた乾隆は、折りしも蘇州で旗人の哈六同が地位を恃んで漢人の土地を奪っていることを耳にし、蘇州へ下る。その頃蘇州には我来也という義賊が出没していた。康煕一行は粥舗を買い取り、商いをしつつ街の様子を探る。蘇州知府の娘で哈六同の許婚の雲巧は、たまたま見かけた康煕に心を奪われる。一方、康煕らは哈六同にからまれる青年・譚一徳を助け、意気投合する。

「紫砂記」 全6集(第24集~第30集)
 康煕は偶然、紫砂壺の内側に冤罪を訴える言葉が刻まれているのを目にし、紫砂の産地・宜興へ赴き、件の壺の作り手を捜す。探し当てた陶工・張鳴遠は、班得五という悪人に先祖から伝わる名品を狙われ、そのために家族を殺されていた。班得五は先祖が太宗から賜った「免死牌」を持っているため怖いものなしである。

登場人物&キャスト

康 煕:張国立
 8歳で即位して以来すでに四十数年、しかし年齢は気にせずに見るべし。文武百官の前では堂々たる名君だが、素顔はかなり天然っぽいロマンチスト。

宜 妃:鄧 婕
 康煕の寵妃、郭洛羅氏。荘宜院に住む。身も心も康煕に捧げ、することなすことすべて康煕のため。ヤキモチ焼きのくせに、いつもなぜか恋敵を助けてしまうお人よしでもある。

三徳子:趙 亮
 内宮正四品太監総管。つまり、たぶん宦官のトップなのだろう。蒙古人。法印とともに常に康煕に付き従う。

法 印:侯 堃
 僧侶なのに、康煕の側近。皇子たちに武術も教えているし、一体どういう人なのか? 見た目は生臭坊主っぽいが、真面目人間で、けっこうナイーブ。三徳子といいコンビ。

小桃紅:劉 淼
 宜妃づきの宮女。宜妃を心から慕い、まめまめしく仕える。この画像ではよく顔が見えないが、ものすごく可愛い。

于世龍:兪立文
 順天府尹。康煕お気に入りの忠臣で、清官と評判も高い。一見お堅いがなかなか人間味もある。康煕のお忍び先に派遣されると、お忍びを満喫できるよう到着のタイミングをはかるなど気を遣う。康煕はこんな臣下の苦労に気づいているのか?

南懐仁(フェルビースト):徐義昭
 ベルギー出身のイエズス会宣教師。科学や語学などを康煕や皇子に講義している。演じる徐義昭氏は南アフリカの外交官だそうだ。

孝荘皇太后:林黙予
 康煕の祖母。ホンタイジの妃、順治の母。このドラマでは人のよさそうなただのお婆ちゃん。


[犁頭記]

錦 紅:陶 虹
 羅世長の娘。武術好き。男装して丐幇に入りこみ、逮捕された父を助けようと機会をうかがう。

羅世長:蔡鴻祥
 山東・五蓮県の県令。清官で民に慕われている。前年の不作のため春に播く種がなくなり、税糧を農民に分配したことから、洪原道に弾劾され逮捕される。

索額図:劉 龍
 父子二代にわたる元老で、皇太子の叔父にあたる。将来に不安を感じ、皇太子を早く即位させようと動く。しかし、肝心の皇太子の出来の悪さにますます不安が募る。

洪原道:李如平
 青州知府。3年分の税糧を金銭にかえて索額図と皇太子に贈っていた。悪事をもみ消すため羅世長を消そうとする。

索安仁:李 江
 索額図の手下。青州へ来て洪原道に悪事の指図をする。

皇太子:高 虎
 いつ皇太子の座を追われるかと不安のあまり情緒不安定。廃太子も納得のおバカちゃん。

小叫花子:宮 傲
 両親を亡くして乞食になった少年。康煕を丐幇の仲間に紹介してやる。宮傲は当時、人気子役だった。可愛くていかにもはしこそうで、こんな子に「神鵰侠侶」の楊過の子供時代を演じてほしかった。


[銅鼎記]

馬賽賽:劉美娟
 蔵春楼の妓女。たまたま李木庵がなじみ客だったせいで、盗賊が李木庵の店に押し入るために利用された。おかげで事件にかかわることに。

連 鎖:王維明
 日雇い工。身寄りと家をなくした老婆を連れ帰り、息子として世話をする。義母の薬代に困り、内務府総管の屋敷で働いた時に医書を盗み、その本と引き換えに薬屋で薬を得る。

李木庵:李占文
 薬屋「寿之堂」を営む。連鎖に医書と引き換えに薬を渡すが、本が現皇室から流出したものであることに気づき、不安におびえていた。

納嵐万林:李 丁
 内務府総管。宦官と結託して紫禁城のものを盗む。

牟 九:朱徳承
 やくざもの。納嵐万林の依頼で屋敷から盗まれた医書の行方を捜す。


[八宝粥記]

朱雲巧:蒋勤勤
 朱国治の娘。康煕に恋して、強引に迫ってくる。といっても、恋に恋している風情が濃厚。他人の意向やその場の空気を全く意に介さないのは、単に自分だけの世界に浸っているせいだろう。哈六同と婚約している。

我来也:夏 雨
 官からのみ盗む義賊。その正体は、順治末年に刑死した大文人・金聖嘆(1608~61)の忘れ形見。ということはどんなに若く見積もっても40代のはずなのに、ずいぶん若い。(しかし夏雨の出演がうれしいので不問。)父を処刑した朱国治に対する復讐を考えている。

譚一徳:馮遠征
 哈六同に嫌がらせされていたところをお忍びの康煕に救われた貧乏秀才。康煕とすっかり意気投合し、その才を見出される。本人はわけがわからないまま正五品の蘇州監察府都官に任命されるが、世の中何事も理想どおりにいかないことを思い知らされる。

朱国治:管宗祥
 蘇州知府。朱雲巧の父。かつて金聖嘆を処刑している。

哈六同:劉亜津
 皇室に連なる旗人であり、蘇州知府の未来の婿であることをいいことにやりたい放題。もちろん朱雲巧には嫌われている。

墜 児:楊若兮
 朱雲巧づきの侍女。主人が蘇州知府の令嬢であるため、蘇州では怖い者がない。


[紫砂記]

張鳴遠:劉 威
 紫砂(宜興名産の焼き物)の陶工。先祖伝来の供春壺を班得五に狙われ、そのために家族を失う。宮中へ納められる壺の内側に、冤罪を訴える文字を刻んでいた。

彩 雲:戴 嬈
 班得五に養われている娘。後宮入りの養成班(?)に入れられるが、逃げ出したところを康煕一行に保護される。

班得五:方 征
 紫砂マニアで、張鳴遠が持つ名品を手に入れようとしている。太宗下賜の「免死牌」を持つため、気兼ねなく悪事を行う。一方で班家の将来のため、彩雲を後宮に入れようともくろむ。

宋達安:李 耕
 宜興県令。班得五の言いなりのボンクラのくせに包公きどり。自分を称える扁額を集めるのが趣味。

スタッフ
出品人:鄧建国
監 製:張国立
編 劇:鄒静之
撮 像:何 青
美 術:魏 風、楊永正
録 音:顧長寧
作 曲:趙季平
剪 輯:劉淼淼
製片主任:李占文、劉志雪
製片人:張国立、鄧 婕
導 演:張子恩
演 奏:中央首席楽隊
指 揮:趙 麟

主題歌
片頭歌「江山有限」  作詞:鄒静之/作曲:趙季平/演唱:屠洪剛
片尾歌「百姓的事児牽着走」  作詞:鄒静之/作曲:趙季平/演唱:戴 嬈

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