大漢天子

全41集/2002年

 漢の武帝の若き日を描く。
 出演者のトップに陳道明の名があったので、てっきり彼が武帝を演じる重厚な歴史ドラマを期待していたら……。始まったとたんに騙された気分になった(いや、私が勝手に早とちりしていただけなのだが)。陳道明は東方朔だった。冒頭、晩年の武帝の回想から始まるのだが、この武帝、髪とヒゲは真っ白なのに、お肌はツヤピカのまま。このあたりまででドラマのテイストがほぼ想像できる。史実は基本的に無視、ドラマの展開にもつっこみどころ満載、セットや家具調度、台詞にも「こんな時代にこんなものがあるかい!」ってものがいっぱい。例:木簡で読み書きしているのに、なんで紙製の提灯がぶら下がってるんだ! 製作に1800万元もかけたらしいし、一見豪華そうに見えるのに……。
 物語は、能天気でワガママなお坊ちゃま皇太子・劉徹が、危機を潜り抜けて即位、祖母の竇太后との政争や皇位を狙う陰謀との戦いを経て一人前の皇帝に成長していく。皇太子時代の仲間との友情とその末路、恋愛、武帝を取り巻く人々の人間模様などなど、サービス満点。登場人物がものすごく多いが、みんなちゃんとキャラが立っているので、なんのかんの言いつつも楽しくはまってしまった。歴史を借りた青春ドラマだと思えばいい。しかし、あのラストはなー。2に続くのは分かるけれど。中国のドラマってラストがあっさりしていることが多いけれど。ちょっとびっくり。
 劉徹を演じた黄暁明は、このドラマでブレイクした。主人公をはじめとする若手俳優たちを、陳道明、陳莎莉というベテラン勢が支える。いや、この二人がいなかったらどうなっていたか、という気もする。プロデューサーに関錦鵬(スタンリー・クアン)の名があるが、名前だけだろうな、たぶん。(2006年3月)

あらすじ
 皇太子・劉徹は、取り巻きの張湯、郭舎人、灌夫、李陵とともに宮中を抜け出し、山東の厭次に遊びにくる。そこで、文字占いの東方朔、歌妓の念奴嬌と出会う。そのころ宮中では景帝が死に瀕し、竇太后が皇太子を廃して梁王(景帝の弟)を皇帝にしようと画策中。梁王は厭次でのトラブルを利用して、劉徹を亡き者にしようとする。一連の騒動の中で、劉徹は仲間たちと義兄弟の契りを結ぶ。劉徹の危機を救うため一足先に長安に戻った張湯は、廃太子の陰謀に気づき、劉徹の姉の平陽公主と許婚の陳阿嬌も協力して劉徹を助ける。やがて陰謀を制して即位した劉徹だが、権力を手放そうとしない竇太后と要職を占める竇一族のために、何ひとつ思い通りにならない。東方朔を軍師として招こうとするが、東方朔はなんと竇太后の招聘を受けてしまう。……

登場人物&キャスト

劉 徹:黄暁明
 お忍びで遊んでいる間に父の景帝が崩御、自分を廃して別人を皇帝にする陰謀が進んでいるのに、念奴嬌に熱を上げている危機感のなさ。厭次でのトラブルの中で、家来兼友人の張湯、郭舎人、灌夫、李陵と義兄弟の契りを結ぶ。少しずつ皇帝らしくなっていくが、基本的に熱しやすく冷めやすく、短気でちょっとワガママ。そこらへんの若者っぽいキャラが受けたのだろうか? 皇帝の装束を着ると、そこはかとなくコスプレ。

東方朔:陳道明
 厭次の街の道端で文字占いをしていたが、客は一日3人までという偏屈。しかし占いは百発百中。もちろんただの占い師ではなく、経世の才と志を秘めていたのだ。最初反発していた劉徹もやがてその才を認め、即位後、軍師として招こうとするが、それを蹴って対立する竇太后のもとへ。太后に献策するとみせて、その実暗に劉徹を助ける。

念奴嬌:賈静雯
 呉楚七国の乱で功を立てながら厭次侯・劉信に陥れられ処刑された爰類の娘。武術の達人で、仇討ちのために妓女に身をやつしていた。仇討ちがドラマ前半で早々に終わってしまい、拍子抜け。劉徹にしつこく言い寄られるが、本人はなんと東方朔に気がある。舞の名手という設定だが、賈静雯の踊りは下手。そもそもトップヒロインのはずなのに、いてもいなくてもストーリーにはあまり関係ない。

竇太后:陳莎莉
 文帝の皇后、景帝の母。孫の劉徹より、下の息子の梁王を皇帝にしようと画策し、竇一族の権力維持のために心を砕く。強烈な厚化粧がド迫力。ドラマを支えていたのはこの人です。

平陽公主:陳莎莎
 劉徹の同腹の姉。姉弟仲がたいへんよく、何かと弟を助ける。夫の曹寿が劉徹を救うために命を落としたため悲しみに沈んでいたが、やがて屋敷で馬夫として働くようになった衛青に惹かれていく。

衛子夫:王 霊
 平陽公主の腹心の侍女。陰謀のため宮中に帰れず平陽公主の屋敷に一時身を隠していた劉徹の世話をして以来、密かに劉徹に思いを寄せる。やがて竇太后に見込まれて劉徹付きの宮女となり、スパイを命じられる。生き別れの弟を探している。

陳阿嬌:何嘉儀
 館陶公主(景帝の妹)の娘。子供の頃の「金屋蔵嬌」の約束を信じ、劉徹を一途に思い続け、即位に協力する。しかし皇后になって喜んだのもつかの間、嫉妬深くヒステリックな性格で、早々に嫌われる。

李 陵:劉冠翔
 劉徹の義兄弟。人望厚い老将軍・李広の孫。主君に輪をかけて脳天気で単純なお坊ちゃん。秋嬋とラブラブ。紆余曲折を経て、帰ったら結婚する約束で対匈奴戦に出征するが。

張 湯:張明健
 義兄弟のうち一人だけ年長だが、やっぱり主君の劉徹が一番の兄貴分(それってどうなの?)。法の鬼で鉄面無私の廷尉(裁判官みたいな官職らしい)だったが、劉陵にたらし込まれて破滅。

郭舎人:劉瀟瀟
 劉徹の乳母の息子。裁縫の名人。性格は軽めで口がうまい。劉徹を助けるためにあそこが役に立たなくなり、宦官として仕える。

灌 夫:賈宏偉
 劉徹の義兄弟。武人。直情径行な性格のようだが、仲間たちの中で一番描写に手を抜かれていたか。

秋 嬋:劉怡君
 父親が爰類の部下だったため念奴嬌の妹分となり、ともに仇討ちをする。自分をかばって死刑になる李陵を救うため長安にやって来る。騒動の結果、李広に弟子入りと李陵との婚約を認めてもらう。剣の腕は李陵より上。

衛 青:宋大光
 黄河のほとりの馬夫。梁王に追われた劉徹と、匈奴に襲われた平陽公主をそれぞれ救う。平陽公主の屋敷で働いている時、再び劉徹の危機を救ったことから取り立てられる。同じ屋敷にいた衛子夫と生き別れの姉弟であることにお互いになかなか気づかない。

竇 嬰:宋小川(友情出演)
 竇太后の甥。権力者のはずだが、おばさんのパシリにしか見えないぞ。

梁 王:姚 剛
 景帝の弟。甥である皇太子・劉徹の命を狙う。帝位争いに敗れて涼州に飛ばされるが、あきらめずに機会をうかがう。

館陶公主:謝金天
 景帝の妹、陳阿嬌の母。お調子者であまり頭がよくなく、娘に頭が上がらない。ツバメを屋敷に出入りさせている。

王皇后(太后):徐 琳
 景帝の皇后、劉徹の母。気が弱くて姑(竇太后)と息子の間で板ばさみ。

張 騫:趙正陽
   厭次で劉徹と出会う。劉徹のせいでいったん死に(!)、劉徹らは殺人罪で逮捕されるが、息を吹き返した(!!)。後に劉徹に西域への使者に任じられるが、竇太后の反対のためなかなか出発できない。

李 広:遅国棟/李 敢:喬 杰
 李広は「飛将軍」の異名を持つ往年の名将で、御林軍を統率する。息子の李敢は長安の警護を担当する。親子揃って筋金入りの忠臣。李陵の祖父と叔父で、厳しいながらも李陵をとても可愛がっている。

淮南王(劉安):孫飛虎(友情出演)
 皇族の最年長。穏健な人格者を装いつつ、帝位をじっと狙っている。

劉 陵:商 蓉
   淮南王の娘。父親の帝位を狙う陰謀に加担する。得意技は色仕掛け。

雷 被:張 晗
 淮南王配下の武将。劉陵に片思いしていて、思い切り利用される。

老侯爺(劉信):修宗迪(友情出演)
 厭次侯。念奴嬌に父の仇と命を狙われる。しかし、まさかこんなにあっさり死ぬとは。

劉 義:李大昕
 劉信の息子。梁王におもねって劉徹を亡き者にしようとする。父を念奴嬌と秋嬋に殺され、二人を捕らえようとするが、逆に秋嬋に殺された。李陵は秋嬋をかばって犯人だと名乗り、処刑されかかる。

霍去病:徐 靚
   孤児の少年。孤児仲間とともに衛青に兵士となる訓練を受ける。第1集に東方朔が病気の子供を治し、霍去病と名づけるシーンがあったが、同姓同名の別人。いったい何の意味があったのか。撮影した後、「しまった、年齢設定間違ってた」とあわてて関係ないことにしちゃったのか。ナゾ。

曹 寿:孫 浩(友情出演)
 平陽公主の夫。気が弱くて(頭もあまりよくなさそう)尻にしかれているが、妻を愛している。梁王に追われた劉徹を助けるため命を落す。

司馬遷:李晟毓
 司馬談の息子ではなく孫という設定になっているのは、何の意味があるのか。融通のきかない性格。


スタッフ
出品人:石雪、史京国
総策劃:賀赫、鄒賽光
芸術総監・編劇:楊暁雄
総制片人:閻大可
制片人:周敏
宣発総監:劉薇
制片主任:宋省勤
美術設計:王瑞林、孔雪君、蔡雪剛
造型設計:陳嘉儀
統 籌:徐強
導 演:高翊浚、梁本熙
総監制:関錦鵬

主題歌
片頭歌「守業更比創業難」  作詞:楊暁雄/作曲:蘇越/演唱:井崗山
片尾歌「忘了我」  作詞:楊暁雄/作曲:蘇越/演唱:黄格選、初瑞

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