大国医

全40集/2008年

 1926年から1949年の時期、洛陽郊外の平楽鎮に居を構える漢方医一族の歩みを描く。モデルとなった平楽の郭氏は実在し、現在も子孫が医者として活動しているようだ。
 物語はヒロイン・雲鶴鳴を中心に語られていく。「平楽郭氏正骨」といえば、すでに200年の伝統があり、先祖伝来の医術の確かさと、誰にでも無料で治療を施すなどの善行で、平楽鎮はもちろん周辺地域では知らぬ者のない存在だった。郭一山(趙文瑄/ウィンストン・チャオ)の後妻として嫁いできた雲鶴鳴(徐帆)は、夫から医術を学び、自身も優れた医者となる。そして、内でも外でも夫を助け、子供たちを育てあげ、家庭内のいざこざを収め、郭家を狙う悪人の攻撃をかわし、郭家を支えていく。やがて日本軍が洛陽にもやって来て、日本軍司令官の治療をさせられたり、郭一山が捕らえられたり、家を出て逃げるはめになったりといった苦難を乗り越えて、やがて迎えた日本の降伏。ところがそのとたんに郭一山が亡くなってしまう。その後は雲鶴鳴が一家のあるじとなり、治療を継続し息子たちに医術を伝えつつ、新中国成立を迎えるのだった。
 「正骨」(の定義がよく分からないのだが、接骨、整骨、整体何でもござれのようだ)や治療についての描写は間違いなく面白い。が、骨董をめぐる物語が混じるのは不要なのではないか。特に、骨董愛好家の日本軍司令官・五犬一郎(劉衛華)から中国の貴重な文物を守ろうとするストーリーは、余計な気がする。白馬寺の住職が実は東京帝国大学に留学経験のある考古学専門家で、周代の銅鼎を地下室で一週間で模造できてしまうというのは、いくらなんでも。
 さらに、イタリア人宣教師・馬利奇(卡爾)なる人物がいて、本当に宣教師なのか、骨董で一儲けしようと企む山師にしか見えないのだが、医学を学んだこともあるそうで、郭氏正骨を賞賛し続ける。この馬利奇も五犬一郎も中国の歴史や文化に造詣が深く、彼らの口から医術および古代文物をネタに中国文化礼賛の台詞が語られるという仕掛け。外国人に語らせるのがミソなのだろう。骨董を持ち出したのは、中国文化の素晴らしさをひと目で説明できるものだからだろうが、医術ドラマじゃなかったのか。伝統文化の称揚も国威発揚も結構だが、やり方が安直にすぎないか。呉子牛監督は、この後も似た傾向のドラマを撮り続けているようだが、今後の作品鑑賞に不安を抱かざるを得ない。呉子牛がどこまで行くのか見届けたい気もするが。
 抗日ゲリラの活躍なども描かれているが、戦闘場面にやけに力が入っていて、これまた何が主題のドラマなんだか忘れそうになる。
 郭家を仇と狙う悪役の劉仙堂(王絵春)という人物も、分かりやすすぎて底が浅いのが残念だ。しかし王絵春の怪演がなかなか見物なので、まあいいか。
 とにかく、物語が散漫になったのが惜しい。医術の話に絞っていたら良かったと思う。また、物語の舞台は河南省の洛陽周辺なのだが、ロケの大半は山西省で行われていて、いくら洛陽だの白馬寺だのが出てきても、どうにも山西にしか見えない。地名が出てくるたびに、一瞬「ここはどこ?」状態になって困った。(2011年8月)

あらすじ
 すでに二人の妻を亡くした郭一山は、三番目の妻として雲家の娘を迎える。しかし花嫁を迎えに行く途中、負傷し治療を求める馬利奇に遭遇し、引き返して治療にあたる。馬利奇は自ら受けた「郭氏正骨」の治療に奇跡だと感嘆する。その後、婚礼の宴の最中に郭一山が山賊に拉致される。これは郭家を仇とみなす劉仙堂の差し金だった。雲氏は自ら山へ乗り込み、夫を救おうとする。山賊の仲間の趙富賓は、かつて郭家の恩を受けていたため、二人を逃がしてくれる。読み書きはできないが聡明で大胆な妻を信頼した郭一山は、一子相伝の伝統を破り、妻に医術を伝えることにし、鶴鳴と名付ける。鶴鳴はめきめき腕を上げ、公私ともに夫を支えて郭家の大黒柱ともいえる存在になった。やがて日本軍が洛陽に進駐し、平楽鎮にも姿を見せる。……

キャスト&人物紹介
雲鶴鳴:徐  帆
  善良で聡明なヒロインが苦難続きの一家を支えるというある意味王道の物語。医者としても主婦としても非の打ち所がない。

郭一山:趙文瑄(ウィンストン・チャオ)
  医術の腕は確かでいい人だが、ちょっと頼りないというのが周囲の一致した見解。

劉仙堂:王絵春
  同じ平楽の医者だが、腕はあやしい。郭家を先祖代々の仇とみなし、常に郭家のせいでイライラしている。郭家を滅ぼすためなら手段を選ばず、後先を考えず突っ走る。

花  娘:劉莉莉
  郭一山の父(譚霏翎)の妾。最初は雲鶴鳴を嫌うが、信頼するようになる。子はおらず、甥の時磚頭を可愛がっている。郭一山らは父の死後もちゃんと彼女を立てている。

馬利奇:卡  爾
  イタリア人で宣教師らしいが、骨董で一儲けしようとする山師としか思えない。郭一山や雲鶴鳴と次第に友人づきあいするようになり、欧州で病院を開くよう説得する。

彩鳳鳴:韓  暁
  もとの名は大鳳。戦乱のため一家で平楽に流れてきたところを、偶然郭家に救われる。やがて両親や花娘の希望もあり、郭一山の妾になる。

時磚頭:高  天
  花娘の甥。14歳の時から郭家で育った。郭家の雑貨店を任されているが、売り上げをちょろまかすなど、人間の出来はいまいち。鳳鳴にずっと片思い。あの最後は納得いかない。

郭巧巧:瑛  子/黄  楠(童年)
  郭一山の長女。前妻の娘。長じて抗日ゲリラに参加して、家族を心配させる。死んだという誤報で郭家はいったん真っ暗になるが、白挺松と結婚して共産党員になっていた。

郭済遠:楽  山/王  溪(童年)
  郭一山と雲鶴鳴の息子。郭家の長男として、やがて母について医術を学ぶ。

郭一方:張洪銘
  郭一山の従兄。一子相伝のため医術を伝えられておらず、先祖伝来の処方箋を手に入れようとしたり、息子を弟子入りさせようとしたり、常にうまい汁を吸うことばかり考える。

一方妻:王小紅
  郭一方の妻。口うるさく、人の悪口ばかり言うイヤな女。

郭一川:温  昊/一川妻:楊  光
  郭一山の従弟。知恵遅れだが善良で、郭一山を慕っている。妻はなかなか出来た女性。

趙富賓:張  山
  郭家に恩があり、山賊になっていたが、やがて共産党の抗日ゲリラ団の団長に。郭家と長く親しく付き合い、お互いに協力する。

白挺松:馬浴柯
  郭巧巧と同じ学校の学生だった。共産党員で趙富賓の部下。郭巧巧の夫となる。

五犬一郎:劉衛華
  洛陽に駐屯する日本軍の司令官(たぶん。よく分からない)。中国文化に造詣が深く、骨董好き。腰を痛め、郭一山に治療させる。「五犬」って何と読むのだろう……。

劉王氏:王  潭
  劉仙堂の妻。良い人なのだが、気が弱くて夫の言いなり。

弘元法師:許松源
  白馬寺の住職。五犬一郎から金文解読のために預かった鼎をすり替えたり、文化財を流出させまいと努力する。郭家も親しくしており、協力する。

程司令:段飛宇/程  妻:康  晶
  洛陽の国民党のお偉いさんとその夫人。娘の菁菁の怪我を郭家で治療してもらってから、郭家と親しくする。

郭済財:顧海波/秦章鳴(童年)
  郭一方の息子。歯科を開いても、正骨を学ぼうとしてもなぜかうまくいかない。

程菁菁:鄧  娜
  程司令の娘。怪我を郭家で治療してもらい、両親の希望で郭夫妻の義子となる。後に郭済遠の妻となるが、怪我の時には巧巧より年上だったのに、結婚の時には郭済遠と同い年になっている。

劉永旺:宋子豪/郝哲謙(童年)
  劉仙堂の息子。父親と違ってしっかり者そうだ。これからも苦労しそうだが頑張れ。後に呉根生と改名。

驢駒子:閻継開
  時磚頭の息子。これも父親と違って賢そうだ。後に時新生と名付けられる。子役がみんなうまい。

呂二孬:国永振
  劉仙堂の従兄弟。基本ろくでもない奴だが、劉仙堂にすごく良くしている。なんだか不思議。

スタッフ
出品人:朱彤、呉長忠、盛漯松、杜天信、王大方、高小平、胡国臣
総顧問:蕭懐遠
総監製:汪国軍、孔玉芳
監  製:黄涛涛、劉国利、馬建中、張林書、王貴武
総策劃:馬正躍、鄭彦英、段玉賢、陳浙閩、趙鴻友、万克、李庚香、韓新鋒
策  劃:孫蓀、白頴、陳亜欣、徐暁明
総製片人:盛漯松、周利明
製片人:王志忠、楊新州、夏傑
責任製片人:李長江
編  劇:孟憲明
責任編審:柳松
撮  影:陳軍、葛延松
美術設計:蘇雅拉図
執行製片人:司馬小加
導  演:呉子牛

主題歌
片尾主題歌「無病歌」  作詞:李春/作曲:周志勇/演唱:李殊

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