東周列国 春秋篇

全30集/1997年

 中央電視台が「三国演義」に続いて製作した大河歴史ドラマ。春秋時代の有名なエピソードを重厚にスケール豊かに描く。
 技術的にも芸術的にも「三国演義」と比べて進歩が著しい。オープニングからしてセンスが全く違う。映像だけでなく、オーケストラと男声コーラスのみの重厚なテーマ曲は、いかにも文学的香りのするドラマが始まりそうな予感。とにかく「三国」は気合と熱意は伝わってくるものの、素人の私でさえケチつけたいところが多々あった。このドラマにはそれがない。テンポはまだゆったりしているが、にもかかわらずドラマが緊迫している。中国のテレビドラマには珍しく一話完結方式だからか、一話一話が充実し、第4集などまるでギリシャ悲劇のよう(ギリシャ悲劇をよく知らないけど)。
 監督は「三国演義」の監督の一人、沈好放。「三国」での仕事が評価されての起用だろう。ドラマのすみずみまで監督の神経が行き届いている印象だ。脚本、配役、映像、美術、衣装、音楽、すべてに文句のつけようがない。特に、ここまで照明に凝った中国のテレビドラマは初めてではないか。放送当時、ああ中国のドラマのレベルもついにここまで来たかと感無量だった。今でもシリアス系歴史ドラマの最高作の一つだと思う。
 印象に残るシーンはいくつもあるが、個人的には呉子胥がしっかり描かれていたのがうれしい。亡命劇からはじまり、5回にわたってかの呉越の抗争が描かれる。ちょっと不思議な気がしたのは、専諸が呉王暗殺のため、まず魚料理の修業を始めること。給仕だけではダメなのか。料理の名人になってはじめて王宮に入り込めるということなのだろうが、呉子胥も試食しては顔をしかめる……。日本人にはたぶん考えつかないエピソード。もちろん屍を鞭つシーンはたっぷり見せてくれる! 西施役にはどんな美女が出てくるのかと期待と心配を同時にしていたら、出番は一瞬で顔を見せないという逆転劇。
 しかし私が一番コーフンしたのは、これまた出番が一瞬の東方聞桜だ。「紅楼夢」の美少女・探春が、すっかり大人のいい女になっていた。そして相変わらず美しい。もっと出て欲しかった。
 さらに最近になって第21集のキャストに胡軍の名を発見。同姓同名の別人?と思ってビデオを見直すと、あの胡軍だった。「天龍八部」で、付け髭で変装した時と同じ顔だった。(2006年3月)

タイトル一覧 (カッコ内は脚本)
  1 驪山烽火(王培公)/2 黄泉認母(郭啓宏)/3 如此君臣(郭)/4 築台納媳(郭)/5 諸児文姜(王)/6 管仲拝相(郭)/7 尊王攘夷(郭)/8 覇主斉桓(郭)/9 仁義大旗(王)/10 驪姫乱晋(欧陽逸冰)/11 羊皮換相(欧陽)/12 選君図報(欧陽)/13 重耳砺志(欧陽)/14 重耳返晋(欧陽)/15 文公成覇(欧陽)/16 罪哭崤山(欧陽)/17 趙盾弑君(郭)/18 趙氏孤児(郭)/19 一鳴驚人(王)/20 荘王治楚(王)/21 覇主余韵(王)/22 崔慶之乱(郭)/23 晏子相斉(郭)/24 高山抑止(欧陽)/25 逃出昭関(郭)/26 専諸刺僚(郭)/27 三約伐楚(欧陽)/28 掘墓鞭屍(欧陽)/29 会稽之恥(欧陽)/30 勾践滅呉(欧陽)

キャスト
周幽王:王絵春(第1集)/鄭荘公:唐国強(第2~3集)/斉襄公:鮑大志(第5集)/斉桓公:楊立新(第6~8集)/管 仲:劉 涛(第6~8集)/鮑叔牙:鄭 強(第6~8集)/宋襄公:修宗迪(第9話)/楚成王:張 山(第9、15、19話)/重 耳:蒋 愷(第10、12~16集)/伯 姫:常 遠(第10~12、14~16集)/秦穆公:譚宗堯(第11~12、14、16集)/鄭文公:閻懐礼(第16集)/屠岸賈:魏宗万(第17、18集)/楚荘王:張光北(第19~21集)/華 元:胡 軍(第21集)/晏 嬰:石小満(第22、23集)/斉荘公:閻懐礼(第22集)/孔 子:王絵春(第24話)/伍子胥:呉 剛(第25~30集)/申包胥:修宗迪(第25、28話)/公子光(闔閭):李慶祥(第26~28集)/夫 差:鮑大志(第28~30集)/伯 贏:東方聞桜(第28集)  ほか

スタッフ
総策劃:王楓
総監製:楊偉光
監 製:于広華、李培森、劉宜勤、賈文増
総製片人:靳雨生
策 劃:呂基中、譚希森、許二春、楊宝亮、楊沛徳、程宏、李汀、張小毛
編 劇:王培公、郭啓宏
劇本改編・導演:沈好放
音 楽:徐沛東
服 装:張嵐
美 術:甘軍、易振洲
武打設計:范冬雨

主題歌
片尾歌「黎民百姓長久」  作曲:徐沛東/演唱:葉 凡

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