ベストセラー小説「塵埃落定」のドラマ化。作者の阿来が1994年に執筆した処女長編小説で、1997年に出版され、茅盾文学賞を受賞している。「塵埃落定」という言葉は、流行語にもなった。日本語訳も出版されている(私は未読)。
物語は、20世紀初めから半ばにかけての四川省北部のあるチベット族の土司(首長のようなもの? 世襲で土地と民を支配する)一家の盛衰を描く。主人公の土司の次男は、智恵遅れで周囲から馬鹿にされていた。ところが、常人と違う感覚と常識にとらわれない斬新な発想で、次第に勢力を拡大し富を手にし、美貌の妻を得る。……相続争い、土司たちの勢力争い、その外では日中戦争が起こり、国民党と共産党が戦う。やがて共産党の「解放」により、土司たちの統治は終わりを告げる。新時代に適応し、歴史の変遷を見届けたのは、愚かだと思われていた次男だった。
美しい風景、衣装、セット、音楽などどれも文句なく素晴らしく、見ごたえ充分だ。特に、きらびやかな民族衣装と装飾品の数々は、最大の楽しみ。チベット族の社会制度や文化などの勉強にもなる(チベットに詳しい人がどう感じるのかは分かりません)。原作はエロチックな表現が話題のようだが、ドラマではもちろん、かなりぼかされている。また、原作はどうだか知らないが、またこのドラマに限らないが、後半、チベット政策に配慮したような表現が目につくのは仕方ないだろう。
主演の李解は、「笑傲江湖」の林平之。高山病でダウンした孫紅雷に代わっての登板だったらしいが、もう孫紅雷がこの役を演じているところなんか想像できないくらい、はまっている。主人公の母である麦其土司夫人役の宋佳が素晴らしい。美貌と存在感で周囲を圧倒する。主人公の妻役の范冰冰も美しく、出番が後半だけなのが残念なくらい。しかし主要キャストは豪華だが、これだけチベット風味の濃厚な物語なのに、チベット族の俳優が脇役に甘んじているのは残念な気がする。(2006年10月)
あらすじ
四川省阿[土貝]地区の麦其土司は、敵対する汪波土司の隊商を襲い、捕らえた美貌の漢族の娘を娶る。生まれた次男は知恵遅れだった。やがて麦其土司は汪波土司に対抗するため国民党に助力を要請し、部隊を近代化する。その代償としてアヘン栽培を託されたことが、他の土司たちとの争いに発展していく。その中で、次男の賢さに気づいた麦其土司は、長男で問題なかったはずの相続について思案し始める。北の辺境へ派遣された次男は、そこで思う存分腕を振るい、誰もが一目置く存在になっていく。……
登場人物&キャスト
二少爺:李 解 | |
麦其土司:劉 威 | |
太 太:宋 佳 | |
塔 娜:范冰冰 | |
管 家:洛 丹 | |
大少爺:仁青頓珠 | |
桑吉卓瑪:許還幻 | |
茸貢土司:韓再芬 | |
黄初民:舒耀瑄 | |
央 宗:小達珍 | |
索郎澤郎:周暁鵬(左)/小爾依:桑 丹(右) | |
翁波意西:多布吉 |